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「僕が一番不満だったのは…」野村克也の“盟友”、江本孟紀が明かす“月見草”の真実「話がよくできすぎている」「実際は月見草ではなく…」
text by
江本孟紀Takenori Emoto
photograph bySankei Shimbun
posted2023/02/11 11:02
楽天監督時代、江本孟紀が解説に球場へと訪れると、訪問をどこか待ち望むように迎える野村克也の姿があった
「なんか最近コメントがウケているみたいですね」と話題を振ったら喜んじゃって、「まあな」ってニヤついた。「やっぱり今までのように故事から探しているんですか?」と訊いたら、「おまえなあ、毎日そんなかたいこと言ってどうするんや。自分で考えているんや」と得意顔。「やっぱり毎日だから、どうしようかといろいろ考えているんや。これでも大変なんだよ」と照れた。その準備にプラス当日の試合状況からあのぼやき会見は成立したのだ。
なかなか、野村監督から目が離せなかった
ぼやき会見がウケて本当によかったと思う。
それまでは野村監督の言葉といえば、人をぼろくそに言うことぐらいしかなかったのに、いまや野村語録などという言葉があるぐらいだ。ホームラン王ならぬ名言王。
もちろん、本人の努力あってこそ。70代でこの進化は本当に怪物だ。
2011年2月、野村監督は「孔子文化賞」を受賞した。
野村監督の名言や野球理論と論語で編集した著書『野村の実践「論語」』(小学館)を2010年11月に出版して、それが評価されてのことだ。ところが、その授賞式で中国の記者から孔子のことを訊かれて、しどろもどろになってしまった。
孔子のことはよく知らないのだ。知らないけど知っているように見せるのがうまいだけ。日本の記者はそのへんのことは承知していて気を使ってくれるが、事情を知らない中国の記者は突っ込んじゃったという。
せっかくぼやき会見で自分の言葉を獲得したのに、またヘタに孔子などに戻るからいけない。しかし、そのときも発展途上だったのだ。なかなか、野村監督から目が離せなかった。
話すスピードが遅い。江本が理由を聞くと…
実績があって、外見もドンとして貫禄がある。で、ぼそぼそしゃべる。そうすると、なんでもないことを言っても、なにか深い意味があるように聞こえてしまう。