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「Q.投手が打者に一球も投げないで勝つ方法とは何か？」野村克也がキャンプ中に解かせたペーパーテスト…江本孟紀が明かす“ノムラ野球の真髄”
posted2023/02/11 11:01
講義形式で選手に野球の知識を注ぎ込んだ野村克也氏。江本孟紀氏は選手時代、野村監督が実施したペーパーテストの設問を覚えているという
text by
江本孟紀Takenori Emoto
photograph by
Tamon Matsuzono
江本孟紀著『野村克也解体新書 完全版 ノムさんは本当にスゴイのか？』を抜粋した内容を特別に公開します。《全3回の2回目／前編は#1、続きは#3へ》
Q.ピッチドアウトとウエストボールの違いについて述べよ
まるでスポンジが水を吸収するように、野村監督はドン・ブレイザーの野球理論を自分のものにしていった。
そして、その知識を選手に伝えるために、キャンプのミーティングでペーパーテストをやった。「ピッチドアウトとウエストボールの違いについて述べよ」という設問があったのを今でも憶えている。
ピッチドアウトは、盗塁やヒットエンドラン、スクイズを防ぐためにストライクゾーンから外れたボール球を投げること。キャッチャーが送球しやすいように、低めに投げることが多い。
ウエストボールは、バッターの打ち気を逸らすために大きく外れたボールを投げること。バッターが待っているコースや球種を探ったり、次の決め球を生かすために投げたりすることもある。ウエストボールは和製英語で、英語ではウエストピッチ（Waste pitch）という。Wasteは費やすという意味で、「次に投げるボールのために費やす球」という意味だ。
ランナーがいてバントをしようとしている。ウエストはたんに高めに外す投球。投げた瞬間に大きく外れることがわかるから、ウエストするとランナーはスタートを切らない。
ピッチドアウトは、ストライクの高さで横に外す投球。ランナーはバントできると思って飛び出してしまい、アウトにすることができる。
野球理論に関しては、だれにも負けない自負心がある
バントのサインを盗んだときに、それをランナーに悟られないためにピッチドアウトすることもある。ランナーはコースの高さでバッテリーがかわそうとしているかどうかを判断するから、ピッチドアウトだとランナーに悟られないのだ。
テレビの解説でも新聞でも、いまだにピッチドアウトとウエストは曖昧に使われている。プロでも正確に区別できる人は少ない。
