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「来年も投げると決めていた」金子千尋(39歳)はなぜ“コーチ転身”を決意したのか?〈山本由伸の覚醒、期待の若手ピッチャーも語る〉
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph byTomosuke Imai
posted2023/01/30 17:00
「引退試合をファンの皆さんの前でできなかったことが少し心残りです」と素直な心境を明かした金子千尋。コーチとして球界への恩返しを誓った
――当時の山本投手のように、今、金子さんが期待している若手投手はいますか?
金子 たくさんいますよ。もうすでに注目されていますが、高卒2年目の畔柳(亨丞)くんはほんとにすごいですよ。キャッチボールをたまにする機会がありましたが、球が強く、もう手が痛くて。捕ったときに(グローブの)ポケットの上に当たるんですよ。
あと、由伸にも通じる部分ですが、彼もとても素直で。そして自分が何をすべきかというのをわかっている気がします。課せられる練習も大事なんですけど、考えて練習できているというか。現状はまだピッチングフォームとボールが一緒ですし、どうしても力で行ってしまうところがある。だから、今はとにかく経験ですね。バッターとの駆け引きやバッターの対応をもう少し観察できるようになったら、そこまで力を入れなくても抑えられるという感覚がたぶん出てくるので。
――チームメイトとして接した時間は今後の指導にも生かせそうですね。個人的なことですが、金子さんは引退したら野球から離れるのではないかと思っていました。
金子 それは自分でも思っていました、違う世界に一度飛び込んでみたいと。でも、今回のようなチャンスは今しかないかもしれない。なんだかんだ野球が好きで、野球のことを考えている時間はそれなりに長いと思う。だから今のうちにできることはやりたい。あと、指導を通して人間的にも成長したいという思いもあります。常に何かを求められる人間でないと、生きてる価値がないかなとも思うので。
――ご活躍を楽しみにしています。ありがとうございました。
金子千尋(かねこ・ちひろ)
1983年11月8日、新潟県出身。長野商高からトヨタ自動車を経て、2004年ドラフト自由枠でオリックス入団。07年から先発に転向すると、先発ローテの一角として活躍。10年に最多勝タイトルを初受賞(17勝)。14年には沢村賞に選出されるなど球界を代表するエースに。19年に日本ハムへ移籍、22年限りで現役を引退。23年より日本ハムの特命コーチに就任
[協力]トータル・ワークアウト渋谷店
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