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「来年も投げると決めていた」金子千尋(39歳)はなぜ“コーチ転身”を決意したのか?〈山本由伸の覚醒、期待の若手ピッチャーも語る〉
posted2023/01/30 17:00
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph by
Tomosuke Imai
――昨年10月に自由契約になってから、引退を決断するまでに2カ月ほど時間がありました。
金子 実はシーズンが終わったときは「来年もやる」と決めていたんです。(引退は)頭の中にありましたが、もしどこかの球団から呼んでもらった時に準備ができていなかったら失礼だと思っていたのでずっとトレーニングをしていました。練習する回数は例年より多かったかもしれないですね。
――「もう1年やる」と決意できた理由は?
金子 一軍で最後に投げたのは5月でしたが、1年間通して投げられたことが大きいですね。当然、球速の衰えはありますが、その中で抑え方が変わってきた。それを自分の中でちゃんと消化して、違うスタイルができあがるのではないかという思いがあったんです。それを新しいシーズンで試したかったなと。
――これまでとは違うスタイル?
金子 ヤクルトの石川(雅規/43歳)さんのストレートの使い方をすごく参考にしていました。変化球で打ち取るというスタイルではなく、いろんな球を使って、最後にストレートで抑える。そういう投球が少しずつできるようになってきたかなという感覚がありました。
ストレートは「速さ」よりも「コントロール」
――ストレートといえば、かつては「ベース盤でボールの勢いが最も強い」と言われたこともありましたね。
金子 ストレートは速さよりコントロールですね。狙ったところに投げられるというのがやっぱり一番大事。もちろん150キロを投げたい気持ちは今もありましたが、それに囚われすぎると自分のピッチングができなくなってしまう。同じストレートの中でも、バッターがタイミングをずらすような球を投げたかった。130キロのフォームで140キロを投げられたら、そこにはもう10キロの差が生まれる。そういう小さな変化でバッターを惑わして、何で打てないんだろうとバッターに思われたいわけです。(沢村賞を受賞した)2014年は自然とそれができていました。
――オファーもあった中で、登録枠の関係などで話がまとまらなかった。まだ投げたいという思いもありながら、最終的に日本ハムのコーチ打診を受け入れた理由は何ですか?
金子 NPBに絞っていましたから、簡単にいえば、プレーできる球団がなかったということに尽きます。でも、そんな中でありがたいことにファイターズは(コーチ打診に対する)僕の答えを尊重して待っていてくれました。現役ドラフトを終えて、1週間後に改めて自分の中で整理して返事をしました。
――心機一転、これからはコーチ業ですね。どんな指導者になりたいですか?
金子 選手それぞれ求めるものや意識していることは違うので、“同じコーチング”はしたくない。選手に合ったものをしっかり見つけられるような指導者になりたい。求められることに全部答えられるように、いろんな引き出しを作っておきたいです。