プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
「どこまでやるんだ、この2人」圧巻の飛び技に大流血も…ケニー・オメガとウィル・オスプレイが「1.4」で見せた“お腹いっぱい”の激闘
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2023/01/09 11:05
トップロープ越しのトペを見事に決めるケニー・オメガ。新日本プロレスのリングに「ベストバウトマシーン」が帰還した
オスプレイの嘆き「これ以上の犠牲を払うなんて…」
オメガに敗れ、5度目の王座防衛に失敗したオスプレイは悔しさをにじませていた。
「子供の頃、レスリングを始めた時からずっと言われてきたことがある。それは『最強のプロレスラーになるには犠牲が必要。犠牲を払わなければこの世界で成功できない』ということだ。だが、犠牲はもう十分に払ってきた。今は違った状況になっている。それでもまだ犠牲だって? この3年間、手錠をはめられたような苦しい状況の中で戦ってきた。おもりを腰につけられて海に沈められ、ずっと何も物音が聞こえない深い海の底で、酸素を求めているような状態で苦しんできた。その中でオレはベストを尽くしてきた。犠牲は常に払ってきたつもりだ。
そして今、ここに来てようやくそんな状況から抜け出し、本当の世界で戦えるはずだった。仲間も得て、オレたちはチームとともに幸せを感じていた。このままうまくいくと思ったのに、まだこれ以上の犠牲を払うなんて……。何をすればいいのか、もうわからない。もうこれ以上の犠牲を払うなんて、まっぴら御免だ。でも、あと1年だけ、この犠牲を払うという状況に身を置こう。あと1年だけだ。1年だけだぞ。そこから先はどこに行こうが何をしようが、オレの勝手なんだ」
その試合がよかったのか、悪かったのか、判定するのはレスラーではなく観客だ。猪木はそう言っていた。この日、2人の試合を見た観客たちは、これ以上なく満足げだった。
オメガとオスプレイの再戦は、アメリカでも行われるだろう。
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