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「孤独も感じました」KAIRIの言葉に号泣、白川戦の批判…それでもスターダム白の王者・上谷沙弥はここまで頼もしくなった「歴史に名前を刻みたい」

posted2023/01/07 17:00

 
「孤独も感じました」KAIRIの言葉に号泣、白川戦の批判…それでもスターダム白の王者・上谷沙弥はここまで頼もしくなった「歴史に名前を刻みたい」<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

12月29日の梅咲遥戦に勝利し、12回目の防衛を果たした上谷沙弥

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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Norihiro Hashimoto

 スターダムのトップ戦線、その両輪が“赤いベルト”と“白いベルト”だ。

 赤いベルトはワールド・オブ・スターダム。団体の頂点のベルト、実力ナンバー1の象徴と言っていい。白いベルトことワンダー・オブ・スターダムは試合のテーマ性、対戦者同士のドラマ性も注目される。中野たむとジュリアの敗者髪切りマッチはワンダー王座戦だった。

 2022年のスターダムは、赤の王者=朱里と白の王者=上谷沙弥が牽引した。どちらも2021年12月29日の両国国技館大会でベルトを巻いた。ちょうど1年後、昨年の12.29両国大会で朱里はベルトを失ったが、その直前に東京スポーツ認定の女子プロレス大賞を受賞している。

 丸1年で防衛10回。その闘いには激しさと同時に安定感があった。ことタイトルマッチに関しては負けるところが想像できない。それくらい強さが際立っていたのだ。ベルトを奪われたジュリアとの試合も時間切れギリギリまでどちらが勝つか読めない展開だった。

 一方、安定していないからこそファンの目を引いたのが上谷だった。プロレスには“不安定”だから面白いということもある。それでいて12.29両国でも王座防衛。1年前に師匠と慕う中野たむからベルトを奪取し、12回の防衛を重ねた。

「山あり谷あり」の防衛ロード

 年末の大一番、ワールド女子プロレス・ディアナの梅咲遥を下してチャンピオンとしての“年越し”を決めると、上谷はこんな言葉で1年を振り返った。

「山あり谷ありでした」

 戴冠した時点では、まだキャリア2年4カ月。それでも難易度の高い飛び技を駆使し、時に狂気性すら感じる闘いでタイトルを守り続けた。前王者のたむは白いベルトを「呪いのベルト」と名づけ、情念や執念、怨念を込めて闘ってきた。上谷は「全力のベルト」と命名。無我夢中で疾走するような防衛劇の連続だった。なにしろ挑戦者は先輩レスラーばかりだ。

 なつぽいとの2度目の防衛戦、その会場は新潟のアオーレ長岡だった。アイドルを目指していた時代、上谷はここでNGT48のオーディションを受けたことがある。結果は落選。泣き崩れたそうだ。“アイドルになれなかった場所”でのタイトルマッチに勝つことで、上谷は「苦い思い出を払拭できました。プロレスに出会えてよかった」と笑顔を見せた。

【次ページ】 ”底”に落ちた上谷のターニングポイント

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