シーズン中もピンチになると真っ先にマウンドに駆け寄り、グラブで口を隠してピッチャーを何度も励ましていた。選手たちから「お母ちゃん」と慕われてきた球団スタッフの上岡千夜子さんが勇退するときには、自ら前に出て温かい抱擁で労っていた。横浜隼人・水谷哲也監督は「そういう宗の姿は、ホームランよりも、ヒットよりも、ファインプレーよりもうれしいです」と話したように、弱肉強食のプロの世界で「優しい宗佑磨」が活躍できていることがうれしい。野球教室に参加した元同級生で内野手の難波勇二も「宗はいつも優しくて、変わらない。僕らの希望なんです。41人いた同級生の中でただ一人、高卒で社会人（プロ）になり、社会で戦う姿を見せてくれた。現役で野球を続けているのは宗だけになってしまったからこそ、1年でも長く野球を続けて欲しい。仕事でしんどいことがあっても、宗が頑張っているから僕らも頑張れるんです」と話した。

宗の言葉を夢中で聞き、目を輝かせる子どもたち ©Yuki Kashimoto

「優しさの根拠」について宗と雑談したとき「根拠？　いやいや、そんなんじゃなくてもともと僕がそういう考えなんです」と言って笑われた。確かに。でもそういう考えが大事なんだと、再確認した。「優しいと言われてしまう選手でも、自分で決めた強い信念があれば、プロでも活躍できる」と。

吉田正尚が抜けた今季への覚悟

　チームの顔である吉田正尚がメジャー移籍することになり、宗の中にも心境の変化が起こっているようだ。

「もう9年目ですからね。年数で言ったらベテランのほう。正尚さんも抜けちゃうし、来季はチームの中心選手になりたい。いや、ならなきゃいけないと思い始めています」

　1月は福田周平との自主トレに明け暮れる予定だ。

「もう1カ月後には戦いが始まる。うわー、マジかよって思いますね」

　安眠中、母親に布団を剥がされたような顏をして、現実に戻ろうとしている宗。来年もここで子どもたちに良い報告をするために。リーグ3連覇、2年連続日本一に向けて、また自分の持ち場で夢を与えていく。

「来季はチームの中心選手になりたい。いや、ならなきゃいけない」 ©Yuki Kashimoto

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