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プロ野球PRESSBACK NUMBER
オリックス優勝の起爆剤・宗佑磨が語る“7年目の覚醒”と“昔の自分に言いたいこと”「僕の守備は忠実じゃないと思われるかもしれないけど」
posted2021/12/27 17:08
text by
樫本ゆきYuki Kashimoto
photograph by
Nanae Suzuki
「まぁ、そう言うでしょうね!」
今年、パ・リーグのゴールデン・グラブ賞、ベストナインの2冠を受賞したオリックス・宗佑磨は「ケラケラケラ」と屈託なく笑いながら、恩師たちの「証言」に聞き入っていた。
「ホント、守備下手だったんスよ。だからもう、マジで考えたこともなかったっす! 自分がゴールデングラブ賞を取るなんて!」
高校時代を思い出しているせいか、興奮して自然と口調が素になってしまう。
「ショートで入団しましたけど、守備はめちゃめちゃ下手くそだったので、ショートをクビになって外野手になったんですよ。でも外野も上手くないしなぁと思いつつ、とりあえず目の前の練習だけはやってました」
「僕の守備は忠実じゃないと思われるかもしれないけど…」
外野手としても開花できずにいた宗に用意されていたのが「外野手登録の三塁手」という役割だった。内野手登録で外野を守った2018年の逆になる。これがマッチした。
「極端に言うと今年は『外野手登録なんだから内野出来なくていいじゃん、ノックできなくていいじゃん』ぐらいの気持ちでできたんですよね。内野手に対するプレッシャーからの解放? ん、違うな。置き換え? とにかくノープレッシャーになって、自分のリズムを思い出したんです」
おそらく、宗のこの言葉こそが、中嶋聡監督、風岡尚幸内野守備・走塁コーチが意図していたことであろう。その狙いに、見事ハマった。
「正面、逆シングル、三遊間の確認。意識しているのはこの3つだけ。僕の守備は人から見たら忠実じゃないと思われるかもしれないけど、これが僕のリズムなんです。守備の形は人それぞれ。そう思ってやってきた1年でしたね」
抜群の反射神経と、天性のハンドリング。サードをやっていくうちにチームメイトから「もしかしたらゴールデングラブ狙えるんじゃない?」「いけるよいける」と言われるようになった。19年まで7年連続で受賞したソフトバンク・松田宣浩と比べても劣らぬ活躍を見せるうちに、だんだん“ソノ気”になっていた。可能性を励まし合う、オリックスの良い雰囲気が、横浜隼人時代と重なった。タイミング的にも、環境的にも追い風が吹いていたことは間違いない。