サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
日本代表の新たな課題は攻撃と「勇気」 焦点はコーチ…「W杯後の無関心」を招かないための“第2期森保ジャパン強化案”を識者が考え合った
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2023/01/02 17:02
続投が決まった森保一監督。横内昭展コーチらが離れる中で、どのような日本代表を再構築するのか
飯尾 そこは同感ですね。帰国会見で吉田麻也が言及していましたが、同様のスタイルで東京五輪準々決勝ニュージーランド戦は勝っていますから。個人的にはPK戦については運ではなく実力で決まるもの、と考えています。例えば本田圭佑は練習場でも“ここは満員のスタジアムで、外したら日本中から叩かれる”というイメージをしてPK練習に臨んでいたそうですから。
木崎 PK戦でのマインドについて実は先日、メッシのマネジメントをやっている方に会って興味深い話を聞いたんです。アルゼンチンは準々決勝オランダ戦でPK戦までもつれこんだ際、彼らも同じく立候補制だったんですが、監督が選手に聞いたら全員「オレが蹴りたい!」と言ったらしいです。要するに“オレの足でこの勝負を決めてやる”とリスクを冒せる勇気を持っていた。国民性もありますが、そういったところに日本とアルゼンチンの差はあるのではと。チームとしてそういう意識レベルに行っていないのなら、PK戦にいくまでに決着をつけた方がいい。
飯尾 クロアチア戦で大きく差を感じたと言いましたが、それは延長戦の交代策にも感じました。点が欲しい場面で大黒柱のモドリッチとコバチッチの2人を同時に下げられるほど余裕があったクロアチアとは対照的に、日本は遠藤航や冨安健洋、酒井宏樹ら負傷者に頼らざるを得なかった。実は森保監督はパワープレー要員として、最後の1枚で町野修斗の投入を考えていたんだけど、たとえば、最後の1枚を切ったあとに冨安がケガを再発させたら10人で戦うことになる。そうなると、試合が終わってしまう。
木崎 酒井宏樹はドイツ戦で負傷し、冨安もドイツ戦に途中出場してそのあと離脱したので、それだけドイツ戦のダメージが大きかったとも言えますね。
ドイツ、スペイン視点から見る“代表チームの強化法”
――今回の日本の戦いぶりとともに、代表の理想のチーム作りを考えていきたいと思います。少し視点が変わりますが、日本が勝利したドイツだとバイエルン、スペインだとバルサやレアル、アトレティコ・マドリー所属経験のある選手が多く、強豪クラブを軸としたチーム作りをしているイメージがありますが、両国は今回、これが上手くハマらなかったのでしょうか。
木崎 僕は今回のドイツ、スペインの敗退で結論を出すのは早い気がしていて、個別の失敗の理由があると感じます。ドイツでいうと、ポジションごとの育成バランスが悪かった。例えばセンターバック、サイドバック、ストライカーと、他のポジションとのレベル差が大きかった。これは大会後、ドイツ国内で敗因として指摘されていました。育成をもう一度見直さなければいけないという議論が起こっています。
一方でスペインに関しては、ルイス・エンリケと交流のあるデインズ元監督の白石尚久さんに聞いたんですが、「選手の声を聞きすぎた」ようです。ターニングポイントとなったのはEURO2020のクロアチア戦です。相手がハイプレスに来た際、裏に蹴るようになって上手くいかなかった。そこで選手たちから「もっとつなぎたい」という声が出た。
飯尾 スペインはルイス・エンリケが練習中、選手一人ひとりの首の裏にマイクをつけて指示をしていたほどだったので、徹底したボール保持もルイス・エンリケのこだわりだと思っていたのですが、選手主導だったんですね。
木崎 そうなんです。もともとルイス・エンリケはカウンター志向で、ポゼッションにこだわっていなかったけど、そこからかなりポゼッションに執着した。だから今回のスペイン戦でも吉田麻也が試合後「裏に蹴ってこないと分かっているからハイラインにした」とコメントしていて、実際コンパクトに守れていた。スペインは決勝トーナメント1回戦のモロッコ戦でも相手が超ハイラインにしていたのに、裏に蹴りませんでしたよね。そういった駆け引きをしなかった点が今大会の敗因だったと見ています。