天皇杯では快進撃も…なぜJ2で低迷？

　2022年、天皇杯で快進撃を続ける一方で、ヴァンフォーレ甲府はJ2で苦戦を強いられていた。開幕からスタートダッシュに失敗し、終盤にもリーグ戦で7連敗を喫した。最終的にJ3降格こそ免れたものの、22チーム中18位でシーズンを終えている。

「リーグでは『なんで勝てないんだ？』って試合が多かったです。押し込んでいるのに決められず、ワンチャンスをものにされてしまう脆さがあった。手応えはあるのに結果が出ない。結果が出ないということは、自分たちが感じている手応え自体が間違っているのかもしれない……。そのギャップに苦しんだシーズンでした。終盤は、天皇杯で勝ち残っていることが心の拠り所になっていましたね。

　試合の内容自体は、天皇杯の方が悪かったりもするんですよ。いかんせん相手が格上ばかりなので、守勢に回ることも多かった。でも、そんななかで粘り強く勝つことができました。リーグ戦での脆さと天皇杯のタフさは両極端でしたが、どちらも若い選手にはいい経験になったと思います」

ヴァンフォーレ甲府の練習風景　©2022VFK

　天皇杯決勝を前に、甲府のFW三平和司は「格下、チャレンジャー」という言葉を繰り返し使っていた。言わずもがな充実した戦力を誇るJ1クラブに対して、相対的に“格下”とされる甲府の選手たちは、どのタイミングで優勝を意識するようになったのだろうか。

「若手はどうかわかりませんけど、少なくとも僕は準決勝で鹿島アントラーズに勝つまで優勝は考えていませんでした。鹿島ってJ1の中でも特別な存在で、一貫したスピリットを持っているじゃないですか。どんなに状態が悪くても、終わってみればやっぱり勝っていた、という強さがある。そこに押し込まれながらも勝ち切れて、ようやく優勝を意識した感じですね。むしろ決勝直前は『ACL、どうやって戦うの？』って余計な心配をしていました（笑）。

　当然ですけど、J1との5連戦はこっちが全て格下なわけで、世間は僕たちが勝つとは思ってないんですよ。でも、うちには『見とけよ？』という思いがあった。『いいよ、油断してなよ』って。そういった反骨心も、勝ち進めた大きな理由のひとつだと思います」

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