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「表に立つのは申し訳ない…」“競馬界から消えた天才”田原成貴が評論家として再起するまで「暗い部分があるからこそ、楽しく伝えたい」
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byNaohiro Kurashina
posted2022/12/24 17:01
『Number』1061号で19年ぶりに小誌に登場した田原成貴氏。有馬記念を前に、あらためてロングインタビューを敢行した
“エンターテイナー”に生まれ変わった田原成貴
軽くやっているように見せているが、展開予想の語りなどを聞くと、非常に細かく下調べをしていることがわかる。騎手時代は、自分の馬の状態がよかろうが悪かろうがレースに出なければならないので、情報の取り入れ方が、今とはまるで異なっていた。
「当事者にとっては、自分に関係のある馬か、それ以外かという見方になるから、全部が全部、出走馬のことをわかっているわけではないんです。だから、『え、こんな馬いたの?』と驚くこともありましたよ。これはみなさん、わかっておいたほうがいい。騎手の場合は相手の弱点なども知っておかなきゃいけないけど、調教師は自分の馬だけ仕上げればいいわけですから」
原稿の執筆にかける時間も、以前より長くなったという。専属契約を結んでいる東スポの土曜日の紙面に掲載される原稿を、週明けには書きはじめ、週の半ばには方向性が決まっている、といったペースで書いているようだ。
以前は、ホースマンとしての本業があるので十分な時間を取れなかったこともあって、(私の知る限りでは)ギリギリまで編集者を待たせるタイプだった。
それが、入念に下準備をしたうえで、ひらめきも生かす、真の実力派エンターテイナーになった。だから現在の「ニュー田原成貴」は、私たちを飽きさせないのだろう。
<#2、#3へつづく>
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