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「表に立つのは申し訳ない…」“競馬界から消えた天才”田原成貴が評論家として再起するまで「暗い部分があるからこそ、楽しく伝えたい」
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byNaohiro Kurashina
posted2022/12/24 17:01
『Number』1061号で19年ぶりに小誌に登場した田原成貴氏。有馬記念を前に、あらためてロングインタビューを敢行した
「おれが表に立つのは競馬界に申し訳ない」
しかし、2009年に大麻取締法違反で執行猶予判決を受けると、2010年秋にまたも逮捕・起訴されて実刑判決が下り、2013年春まで刑務所で服役。出所後は、サラリーマンとして働くようになる。
そのころは、どのくらい競馬関連の情報に触れていたのだろうか。
「スポーツ新聞が職場にあったので、新馬、特別、重賞に関する情報は目に入ってきましたね。出所してからも、ちょこちょこ、有名な馬や騎手が引退するなど話題になる出来事があったとき、何か書いてほしいと依頼されたけど、断っていました。おれが出ると、元ジョッキーで悪いことをした人っていう、ダーティーなイメージがついちゃうでしょう。それは競馬界に対して申し訳ない、という気持ちが強かったんです」
それでも、懇意にしていた記者から、熱心に競馬メディアへの復帰を勧められた。
「書ける書けないじゃなく、おれが表に立つのは競馬界に申し訳ないって何度も言ったんだけど、『田原さんの競馬を見る目、特にジョッキーを見る目で大切なことを伝えていかなきゃダメです。施行側ではなく、メディア側で記事を書くのなら、もういいんじゃないですか』と言ってくれて。賛同してくれた関係者もいるというので、じゃあやろう、と出てしまったんです」
それが前述した、一昨年12月17日付の東京スポーツだった。
「そうして出てしまったら、もちろん『なんで今さら』という人もいたと思うんですけど、ほとんどがウェルカムだった。嬉しかったですね。あそこでウェルカムじゃなかったら、もうやめていたと思う。そのころやっていた仕事も面白かったからね。で、おれの性格からして、やるからには浅くではなく、やっぱり深く伝えたくなるんですよ。自分自身の承認欲求とかではなくて、競馬に関して中途半端なことはしたくなかったので、『もっと、もっと』とやっているうちに今に至った、という感じです。それでも、おれにはダーティーなイメージがついてきてしまう。そういう暗い部分がある人間がやるんだから、なおのこと楽しく伝えよう、と決めたんです」