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「高卒1年目でよくやってる」と言われるけど…19歳松川虎生が明かした“周囲の声”とのギャップ「悔しい1年だったとしか言えません」
text by
千葉ロッテマリーンズ取材班Chiba Lotte Marines
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/12/22 17:02
ルーキーイヤーながら76試合に出場した松川虎生。悔しい思いもたくさん味わった1年だった
佐々木とは練習試合、オープン戦からずっとコンビを組んできており、この日も強い想いでマスクを被った。しかし、1点リードで迎えた3回の1死一、二塁の場面。イーグルス西川遥輝外野手に対して簡単に2ストライクと追いこんだものの、3球目に投じたスライダーを弾き返され、逆転を許してしまった。
「結果論の部分はありますけど、あそこはもっと慎重にいくべきでした」
カウント0-2とまだボールを3つ使える場面。松川自身の考えではフォークかストレート。2球目に空振りをとったフォークのサインを出したが、佐々木に首を振られた。結果的に真ん中付近の甘いストライクゾーンに来たスライダーを“待ってました”とばかりに痛打されている。ピッチャーに首を振られた時こそ、安易に求めているボールを選ぶのではなく、お互い納得した答えを出すべきだった。バッテリーにとって悔しさが残る配球となった。そして、延長11回までもつれたこの試合では、プロ初のサヨナラ負けを味わった。
「2死までいって3球連続ストレートで行って(田中和基外野手に)打たれた。単調になりすぎた。あのゲームで僕はプロ初ヒットともう1本ヒットを打ったけど、サヨナラ負けの思い出しかない。塁が空いている場面でもあったし、もっと状況を冷静に見ながらやるべきことはあったと思っている。ピッチャーのいいところも引き出せなかったし、すんなり行き過ぎた」
のちに、この試合は佐々木にとってもターニングポイントとなったと振り返っている。そして、次の試合から佐々木は松川の組み立てを信頼し、任せる形で試合が運ばれるようになった。
佐々木と松川のバッテリーは4月3日の埼玉西武ライオンズ戦で今季初勝利を挙げると、同月10日のオリックス・バファローズ戦で伝説をつくった。史上最年少バッテリーによる完全試合。ギネスにも登録されることになる偉業は、2人が共通で感じた悔しい想いが起点となっている。
17歳上の美馬「松川のリードのおかげ」
今年、10勝を挙げたベテラン美馬学投手(36歳)とのコンビも悔しさから始まっていた。当初は4連敗スタート。少しずつ特徴を掴み研究しながら必死に17歳上のピッチャーをリードして、そこから巻き返した。
「バッテリーを組ませてもらって、いきなり4連敗で1勝もできなかった。自分のせいだと思って悔しかった。特徴を把握できていなかった。色々な状況においてなにを求めているのかをしっかりと理解しようと思った。色々な状況においての得意、不得意もある。まず1勝した時は気持ちが楽になった」
シーズンオフに美馬は「松川のリードのおかげ」と口にした。捕手にとって、これ以上ない嬉しい言葉だった。