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「高卒1年目でよくやってる」と言われるけど…19歳松川虎生が明かした“周囲の声”とのギャップ「悔しい1年だったとしか言えません」
text by
千葉ロッテマリーンズ取材班Chiba Lotte Marines
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/12/22 17:02
ルーキーイヤーながら76試合に出場した松川虎生。悔しい思いもたくさん味わった1年だった
「どんな1年だったかと言われると悔しい1年だったとしか言えません。決して良かった1年ではない。残っているのは悔しさ。悔しい気持ちの方が強い」
史上3人目の高卒開幕スタメン。史上最年少完全試合捕手。周囲は「“高卒1年目”でよくやっている」と褒めてくれる。しかし、松川には満足感は残っていない。あの日のようにボールを逸らしたこと、盗塁を許したこと、逆転負けしたこと、大量失点を許して負けたこと、様々な場面でのリード、打てなかったこと。反省ばかりが浮かんでくる。
そもそも、アスリートというものは、成功したことよりも失敗体験の方を色濃く記憶しているものだ。楽しかったことは一瞬で消え去り、悔しさはいつまでも脳裏に残る。19歳、プロ1年目を終えた松川も、そうやって悔しさを重ねている。
開幕戦で初マスク、石川を好リード
デビューは鮮烈だった。3月25日、まだ肌寒い仙台での東北楽天ゴールデンイーグルスとの開幕戦。スタメンマスクを勝ち取った松川は、自身3度目の開幕投手を務めた石川歩投手(34歳)を見事にリードしてみせた。
「左打者が多いので石川さんのシンカーやツーシームを引き出すために内角直球を使うことを意識した」という松川の計算通りに試合は進み、7回無失点。イーグルス打線に石川が適時投じるインコースのストレートへの意識を持たせ、その一方で外角に集めるシンカーで打ち取る形で「0」を重ねると、その後、勝ちパターンのリレーで完封勝利を飾った。高卒新人捕手で開幕スタメンを被り、勝利に貢献したのは1955年の谷本稔氏(大映)以来の快挙。一躍、時の人となった。
しかし、すぐにプロの厳しさを体感する。翌日の雨天中止を経て迎えた27日の2戦目。マウンドには佐々木朗希投手がいた。「背番号17」の2022年シーズン初登板とあって、おのずと注目度の高い一戦だった。