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サッカーW杯史上初の“女性審判”に選ばれた日本人「選手が男か女か、それは私にとっては関係ない」山下良美(36歳)はどんな人生を? 

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イワモトアキト

イワモトアキトAkito Iwamoto

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posted2022/11/21 17:00

サッカーW杯史上初の“女性審判”に選ばれた日本人「選手が男か女か、それは私にとっては関係ない」山下良美(36歳)はどんな人生を?<Number Web> photograph by Akito Iwamoto

カタールW杯の審判団に日本からただ一人、選出された山下良美(36歳)。3人の女性主審が名を連ねるのはW杯の歴史を振り返っても史上初のこと

 もっと、もっと審判としてうまくなりたい。ただそれだけの思いで、陸上競技のトレーナーを雇い、走り方から見直した。1試合の平均走行距離は約10〜13キロ、疲れや遅れは即判断に影響する。走っては止まり、止まっては走るを繰り返す。速い展開にも動じず、冷静で的確な判断ができるような体づくりを目指した。

 19年末、男子審判員と同じ厳しい体力テストを経て、1級審判員として認められた。1級の登録により、Jリーグでの主審も担うことができる。ただ、現実としてJで笛を吹いた女子審判員はまだいなかった。

 21年5月、J3の試合で女子主審として初めてピッチに立った。22年4月にはACLでもアジア初の女子主審として笛を任された。

 きっと誰かが、と山下はいう。しかし、その誰かは“自分”にほかならなかった。

「プレッシャーでいっぱいでした。でも、誰もが経験できることじゃない。すべてはこれまで信頼を積み重ねてきてくれた先人たちのおかげ。たまたま、私にバトンがまわってきただけで」

「当たり前のことになってほしい」

 男子の試合で笛を吹く姿がたびたび話題となった。ただその一方で、一部のネットやSNSでは女子審判員へのネガティブな声が漏れることも。
 
『女子審判のレベル低すぎ。わざわざ男子の試合吹かなくていいよ』
『スピードや運動量とか男子と全然違うでしょ』
『足遅くてオフサイドとかちゃんとジャッジできんの?』

 今年8月、アルゼンチン3部リーグで、女性主審が判定に怒った男子選手から暴行を受ける事件も起きた。いまだ女子審判員に対しての目は厳しい。

「正直、男女でスピード差はあります。コンタクトの強さや激しさはやっぱり違う。でも、ジャッジに関わるほどの男女差を私は感じません。試合中にエキサイトするのは、真剣だからこそ。選手やベンチから批判的な言葉を受けたことも私自身はありません。でも、試合中に誹謗中傷や差別的発言があったら、審判員としてしっかりと対応したいと思います」

 ダイバーシティー&インクルージョン、ウーマンエンパワーメントといった時代を反映する言葉にも背中を押される。

「注目されるのは苦手ですが、私を通じてサッカーやレフェリーに関心を持ってくれる人が増えてくれればそれでいい。今はまだ女子審判員そのものが珍しい存在なので。でもいつか“当たり前のこと”になってほしい」

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