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サッカーW杯史上初の“女性審判”に選ばれた日本人「選手が男か女か、それは私にとっては関係ない」山下良美(36歳)はどんな人生を?
posted2022/11/21 17:00
text by
イワモトアキトAkito Iwamoto
photograph by
Akito Iwamoto
「選手が男か女か、それは私にとっては関係ない。目の前にあるのは同じサッカーだから」
願うのはただ一つ、ピッチ上で選手たちが輝くような試合を、ともにつくりたい——。
国際審判員、山下良美。カタールで開催されるサッカーW杯で笛を吹く主審候補36人に、歴代初となる3人の女子審判員が選出された。アジアで唯一、その3人のうちのひとりに選ばれた山下は、大きな責任を自覚している。
「私のパフォーマンスによっては、男子の試合を女子審判員が担当する機会が、そこで途絶えるかもしれない。先人たちが開いてくれた扉を閉めないように、これまで通り全力で試合と向かいたいですね」
今年5月、オーストラリアのレフェリー仲間からのメールで、自分がカタールW杯の主審に選ばれたことを知った。FIFAから発表されたプレスリリース、リストの一番下に記された自分の名前を見つけた。
「えっ、冗談でしょ? って目を疑いました。女子の私が男子のW杯で笛を吹くなんて想像もしていなかったので」
ただ、振り返ってみれば自分のサッカー人生はいつも想像もしていなかったことの連続だった。
なぜ審判に?「まだまだプレーしたいと…」
審判やってみない?
2008年、東京学芸大学女子サッカー部を辞めてすぐのころだった。サッカー部の先輩にあたる坊薗真琴から唐突に声をかけられた。
「えっ! 審判ですか? あ、はい……」
言われるがまま、高校生の大会に半ば強引に連れていかれた。
「4歳からサッカーを始めて、大学卒業後もクラブチームでプレーするつもりでした。特に足は速くないし、ゴールを決めるでもなく、選手としては至って普通だったと思います。でも皆とボールを蹴っているのが楽しくて、まだまだプレーしたいと思ってました。
だから初めは審判に対しての興味は、あまりなかったですね。審判のイメージ……選手から文句を言われる仕事というか、正直良い印象はありませんでした」