プロ野球PRESSBACK NUMBER
18年前、ダルビッシュ有はなぜ日本ハムのドラ1“単独指名”だった? 伝説のスカウトの質問「練習嫌いなの?」にダルビッシュ驚きの答え
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byJIJI PRESS
posted2022/11/19 17:01
日本ハムが単独指名で釣り上げた東北高・ダルビッシュ。右は当時編成ディレクターだった山田正雄氏
今になってみれば、いかにもダルビッシュが言いそうな言葉ではあるし、そうは言っても誰よりも野球に情熱があることは語らずとも分かる。しかし、当時はまだ大成前夜の17、18歳。「生意気だ!」と眉根を寄せる大人は多かっただろう。ところが、山田氏の受け取り方は全く逆だった。
「周りによくよく話を聞くと、実は原因は成長痛にあって、その痛みで走ったりできなかったんだ、と分かりました。ああ、この子は言い訳はしない選手なんだな、と思ったんです」
ふらっとネット裏にやってきたダルビッシュが…
普通なら心証を良くしたいと考えるプロスカウト相手にも、自分を良く見せようとせず、決して媚びない。一方で、視察した3年秋のAAA世界選手権(台湾)では印象的な姿を目にした。台湾戦で先発し打ち込まれたダルビッシュが、降板後にベンチ最前列で声をからして仲間を応援していた。
「僕はベンチの中の選手の姿をよく観察するんです。特に代えられた後、ベンチの後ろで不貞腐れているのか、チームを一生懸命応援するのか。チームのために、と思える選手や、その時その時に与えられたことに全力を尽くせる選手は、プロに入った後必ず伸びていきますから」
もっとダルビッシュのことを知ろうと、目を通した雑誌のインタビューにも惹かれるものがあった。
「ライバル校のバッターについて答えていて、“この選手はインコースが弱いんですよ”とか分析が実に的確で鋭かったんです。バッターと対峙するときに一番大切なものである、野球選手としての頭の良さがあるな、と感心しました。実際に、日本ハムに入った直後にファームの試合を見ていると、ふらっとネット裏にやってきて僕の後ろで相手チームの打者について特徴や弱点など、全く次元の違うレベルの高い話をしていました。それを聞きながら(獲得は)間違いではなかったな、と実感しましたね」
ダルビッシュ獲得の3年後、同じく「性格面」で評価が分かれていたのが4球団競合の末、日本ハムが引き当てた中田翔(現巨人)だ。番長風のいかつい外見と数々の“やんちゃ伝説”は有名だったが、当時シニアディレクターとして獲得に関わった山田氏はやはり、高校生1巡目指名に躊躇はなかったと明かす。
「中田の方がダルビッシュよりも見た目がね……(笑)。色々な逸話があるから凄いなと思ったけど、彼はああ見えて結構、我慢強いんですよ。試合に出られなくても腐ったりせず、なにくそと一生懸命練習する。あとは何よりその才能が凄かった。グラブさばきやスローイングの形、バッティングも凄くコンパクトで、ミート力がある。彼の野球センスは、今まで見てきた選手のなかで野手で断トツでした」