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大津高時代の谷口彰悟にアプローチ、しかし返答は「大学に行きたい」…川崎F現キャプテンを追い続けたスカウトが称える“完璧な人間性”
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byJFA/AFLO
posted2022/11/19 11:29
11月17日のカナダ戦に先発フル出場した谷口彰悟。大卒後に川崎フロンターレに入団したが、向島建スカウトは高校時代からアプローチしていたという
「選手というのは僕らには本性を出しません。ただ一番わかりやすいのは、試合中と試合に負けた後ですね。味方や審判への声のかけ方とか。あとはつい試合中に出てしまう言葉とか、そういうところはチェックしています。『取りたいな』と思った選手でも、ネガティブな態度を出しているときは『いつもそうなんですか?』と監督に聞くこともあります。チームメイトにキツく言ったりするのは、僕はあまり好きじゃないので」
スカウトも羨む人間性「欠点が見当たらない(笑)」
なぜ、スカウトとして人間性を重視するのか。
それは性格や考え方が、プロになった後の成長に大きく影響しているからだ。例えば試合に出場できなくても、コツコツと練習に励む姿勢があるのかどうか。出場機会に恵まれないからといって、不貞腐れた態度をとるようでは大成することはできない。そして自分の課題を見つけて向上していける選手が生き残っていける世界でもある。その点、谷口彰悟はパーソナリティも含めて申し分がない選手だった。
「チームをうまくまとめていますし、みんなが一目置くようなタイプですね。見ての通りの男前で、欠点らしい欠点も見当たらない……。どうやったらあんな風になれるのか、僕も羨ましいくらいです(笑)」
センターバックも経験していたが、“大学ナンバーワンボランチ”と称された谷口は各クラブの争奪戦となっていた。ただ筑波大時代にも指導を受けた風間八宏監督が当時指揮していたことなども後押しして、最終的には川崎への入団を決めた。
実は谷口に限らず、近年の川崎は“大学ナンバーワン”や大会MVPクラスの選手を獲得できていることが多い。もちろん「やれる自信がない」と尻込みされて断られるケースもあるが、声をかけた際の感触はおおむね良好だそうだ。向島は言う。
「チームも強くなって魅力あるサッカーをやっているし、事業としてもさまざまなイベントをやって、地域に根ざしたクラブとしてのイメージがすごくよくなっていきました。そこは僕らスカウトとしてもすごく助かっています。あとはクラブハウスや寮が完成し、獲得にあたっての環境がよくなった。そして中村憲剛のような素晴らしい前例ができて、大学生が希望を持って入ってきてくれるようになったのだと思います」