甲子園の風BACK NUMBER
大阪桐蔭“エース主将”は13年ぶり「松尾さんの安心感」がない新チームで前田悠伍が見せた別格ピッチング「まだまだ力がない。でも…」
posted2022/11/17 06:02
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph by
Sankei Shimbun
この秋、大阪桐蔭の前田悠伍(2年)は「エースで主将」という重責を引き受けた。
同校では、2009年秋に就任した福本翼(現・東芝)以来となる“エースキャプテン”の誕生である。
1年秋から主戦級としてマウンドに登ってきた左腕は、すでに来秋のドラフト候補として大きな注目を集めている存在。そんな前田をもってしても、この“大役”に驚きを隠せなかった。
「正直に言うと、自分がキャプテンになるとは思っていなかったんです」
“夏の敗戦”を引きずっていた前田
新チーム結成当初、前田は夏の敗戦を引きずっていた。
甲子園準々決勝・下関国際戦、1点リードで迎えた9回表。連打と犠打でピンチを招いた前田は、4番の賀谷勇斗に逆転2点適時打を許した。その裏の攻撃は3人であっさり終わり、大阪桐蔭にとって3度目の春夏連覇の夢は途絶えた。何より、2年生エース左腕は先輩たちの夢を自分が終わらせてしまったことに責任を痛感する。
「切り替えようと口では言っても、心ではなかなか切り替えられなくて。甲子園から帰って数日はなかなか気持ちが前向きになれませんでした」
ただ、時間は止まらない。翌日にはすぐに新体制がスタートし、間もなくして秋の大阪府大会が開幕する。持ち回りで務める暫定キャプテンに指名された前田は、必死で気持ちを奮い立たせた。
「チーム内での投票も捕手の南川(みながわ)の方が票数は多かった。でも、今考えると自分が一番たくさんの経験をさせてもらっているので、それもあるのかなと……」