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「引退をずっと考えていました」高梨沙羅が明かす“涙のスーツ失格騒動からの8カ月間”「検査ルールに不明瞭な部分があると思います」 

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雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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photograph byAsami Enomoto

posted2022/11/12 11:03

「引退をずっと考えていました」高梨沙羅が明かす“涙のスーツ失格騒動からの8カ月間”「検査ルールに不明瞭な部分があると思います」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

あの失格騒動から8カ月。再び飛び始めた高梨沙羅がNumberの単独インタビューに応じた

 その後、混乱した頭でスタートゲートに向かい、何を考え、どう飛んだのか。着地した直後に号泣したことなど、何も覚えていないという。

 映像を見返したりしたかと問うと、「……見返せないです」と深く沈み込んだ声で答えた。その瞳は冷えた紅茶のように薄く濁っていた。

「見返さなきゃいけないと思うんですけど、どうしても、見返せない。今でもその瞬間のことを断片的に思い出してしまう。考えていなくてもポッと頭に浮かんでくるんです。だから映像を見たら多分気持ちがついてこなくなっちゃうと思うので……」

「やめることを考えていました」

 その2日後、選手村を離れた高梨はスロベニアの家に戻った。

「オリンピック直後はやめることをずっと考えていました。そのことばかり考えて自分と葛藤していました」

 オリンピックを見ることもなく、ベッドでぐったりとして過ごしていた。そんな時に母親が急遽日本から駆けつけてくれた。何も言わずに寄り添ってくれた時間が再起への大きな支えになった。

「来るとは思ってなかったのでびっくりしました。でも、すごくありがたかったですね。一人だったらたぶん……戻ってこられなかったと思う」

 戻ってこられなかったのは、ジャンプ選手としての高梨だけではないように思えた。ひどく傷ついていた彼女は、すべてが崩れてしまう寸前でかろうじて繋ぎ止めてもらえたのだろう。

またしても“スーツの違反で失格”

 休息期間を置いて高梨はW杯に復帰した。

「出場を決めたからといって競技を続ける決断をしたわけではありませんでした。その時点ではとにかくシーズンが終わるまで頑張ってみようと考えていただけです。与えられた試合に感謝してこなしていこうと切り替えられただけだったんです」

 そうやって戦い抜いたシーズンの最後には少しだけ考えが変わっていたという。

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