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「最初は七分丈ズボンでゲレンデに…」“雪なし県”沖縄出身の少年が…なぜスキージャンプの代表コーチに?「中学で初めて雪を見て」からの“異色の履歴書”

posted2026/02/16 11:15

 
「最初は七分丈ズボンでゲレンデに…」“雪なし県”沖縄出身の少年が…なぜスキージャンプの代表コーチに?「中学で初めて雪を見て」からの“異色の履歴書”<Number Web> photograph by Keigo Amemiya

ミラノ・コルティナ五輪で女子ジャンプ競技のヘッドコーチを務める金城芳樹。「雪なし県」沖縄出身という異色の経歴を持つ

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雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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Keigo Amemiya

 熱戦続くミラノ・コルティナ五輪。すでに3つのメダルを獲得しているノルディックスキー・ジャンプ日本代表だが、実は女子のヘッドコーチは「超異色の経歴」を持つ。出身は温暖な沖縄県。中学生まで雪を見たことすらなかった。ウィンタースポーツからは最も遠いと言っていい場所で、なぜ彼はジャンプ競技に魅せられたのか――? その波乱万丈な競技人生を振り返る。《NumberWebノンフィクション全2回の1回目/つづきを読む》

 ゲレンデに少年が立っていた。穿いているズボンは七分丈だった。

 20年ほど前、雪積もる札幌国際スキー場。足元にはスキー板があり、手にはストックを持っているから、滑る気であるのは間違いない。ただ、上着も頼りないただのダウンで、その出で立ちが、やる気にも気候にも見合っていないのはどうしてだろう。時代を先取りしすぎたYouTuberか。ともかく地肌がむき出しで見るからに寒そうだ。

 少年が家を出る前、下宿先の親戚が「せめてジーパンにしときなさい」と忠告はしてくれたのだが、彼は意固地にこう思っていた。

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「ジーパンなんてカッコわりいさー!」

 ジェームス・ディーンが聞いたら何を思ったか。ともかく中1男子の青臭い思い込みゆえに、沖縄生まれの金城芳樹は場違いな服装のままスキー場の、しかもゲレンデまでやってきたのだった。

沖縄出身の少年が…なぜゲレンデに?

 目的は札幌ジャンプスポーツ少年団の活動に参加させてもらうためだったが、そんな格好だから時間が経てば経つほど雪がどかどかブーツに入りこんでくる。周りの人の視線も、もちろん足も冷たい。外国人スキーヤーが「Oh! クレイジー」とつぶやくのを聞くにいたって、金城はようやく自分がおかしいことに気がついた。

「いやあ、イカれてましたよね。本当に」

 31歳になった金城は、札幌の街で当時の自分を思い出しながら笑った。上下ともに日本代表の暖かそうなスキーウェアを着て、ズボンもきちんと長かった。

 無謀な格好でゲレンデに飛び出した少年はいま、ミラノ・コルティナオリンピックに臨むノルディックスキー・ジャンプ女子日本代表のヘッドコーチを務めている。雪無し県の、しかも沖縄出身の人間が、冬のオリンピックで日本代表を率いるなんて前代未聞だろう。

【次ページ】 沖縄から北海道へ転校…人生初の雪を目に

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