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「ジュニーニョと喧嘩して、罰金を喰らったことも…」今季で引退、鄭大世38歳が語る“エゴイスト”のサッカー人生「本当の自分は弱い人間でした」
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byYuki Suenaga
posted2022/11/08 11:01
今シーズンでの引退を発表した鄭大世(FC町田ゼルビア)。自身を“エゴイスト”と表現する38歳に川崎フロンターレ、ドイツ、韓国、そしてまた日本と渡り歩いたサッカー人生を振り返ってもらった。(全3回のうち、第2回)
頭に浮かんだ憲剛さん、ジュニーニョ、関塚監督の顔
――でも、しばらくして調子に乗っていたことに気づくんですよね。
鄭大世 翌年の2018年、ヤン・ヨンソン監督体制になり、出場機会が減り、もうガクッと崩れました。このときは悔しさをエネルギーに変えて、点を取ってアピールしても、信頼を得ることができなかったんです。心が折れました。どれだけ頑張っても認めてもらえなくて。自分を卑下し、自信を失いました。本当の意味での、初めての大きな挫折でしたね。そのとき、ぱっと頭に浮かんだのが、中村憲剛さん、ジュニーニョ、関塚隆監督の顔でした。まったくダメな今の自分でも、フロンターレ時代に活躍できたのは、あの人たちが支えてくれたからだって。あの人たちがパスを出してくれて、俺は点を取れていたんだと。それなのに僕は自分のゴールのことしか考えていなかった。関塚監督も感情の浮き沈みが激しくて、安定感のない僕を試合で使ってくれました。考えを巡らせていると、他の仲間、スタッフの顔も次から次に浮かんできて、「みんなのおかげ」だったんだな、と気づいたんです。フロンターレ時代から長らく調子に乗っていました。自分が恥ずかしかった。そこから、(清水にいたチームメイトの)杉山浩太、枝村匠馬、村田和哉、鎌田翔雅らみんなに謝りました。「完全に調子に乗っていた。本当にごめんな」って。自分のもろさもあらためて知りました。こんな弱い自分でも、ここまでプロサッカー人生を歩んでくることができたんです。今は心が満たされています。
――プロサッカー選手としては終止符を打ちましたが、これからも人生は続いていきます。
鄭大世 人生が完結してしまったような気がして、怖いです。今はやり切ったという思いが強くて、人生も終わりかなと思うくらい。