「プレイボールから自分のストレートが投げられたと思います。（中略）その後もピンチはつづきましたが、何としてでも次の1点を与えないよう強い気持ちで投げました」

　普通この手のコメントでは失点した場合、「チームに迷惑をかけて申し訳ない」「中継ぎに負担をかけてしまった」といった反省の弁が主なのだが、今永の談話からは堂々とした姿勢が見て取れる。熱量があるのだ。

「申し訳ない」という言葉を使わなかった理由

「僕も『申し訳ない』といった言葉を残したことが何度もあるのですが、記事などを見て冷静に考えると、ここでそれを言われてもなって思いましたし、そう感じている人も多いんじゃないかって。またコメントを出した時点ではまだ僅差で迫っている段階でしたし、悲観的なことを言うことはないと思ったんです」

　エースとしてどう立ち振る舞うべきなのか。今永は投球でも言葉でもその答えを探しつづけている。そしてあくまでも今永の理想は高く、目指すのは圧倒的な存在感だ。

「よく試合中に修正できた、試合を作ったと言ってもらえますけど、それは正直、当たり前のことなんですよ。じゃあ山本投手や千賀投手の当り前って何なのか。僕の“試合を作った”と言われるレベルが6回2～3失点だとすれば、彼らは7～8回2失点が当たり前。また試合を作ること以上に、相手を圧倒する力、制圧する力、支配する力があるんです。あの力を手に入れるためには今からなにをすればいいのか考えさせられます。僕も2～3試合に1回は、完全にゲームを支配しているよねって言われるレベルにまで行きたいなって思います」

僕が目指しているのは外的要因に左右されないピッチャー

　今永は謙遜するが、技術的には確実にそのレベルにまで到達しつつあるように感じられる。あとは、ゲームを支配する雰囲気を醸成させていく必要があるだろう。

「以前から言っているんですけど、僕が目指しているのは外的要因に左右されないピッチャー。例えば連敗中のマウンドに立ってストップさせなきゃいけないとか、味方がエラーしたランナーを絶対に返さないとか、そういったことに左右されることなく、淡々とアウトを積み重ねていく。これがピッチャーとして一番強いと思うんです。そういうピッチャーになることが目標ですね」

　“心技体”、すべてを兼ね揃えた完全無欠のピッチャー。今季のノーヒットノーランしかり、その片鱗は今永から確実に見えている。辿り着くのは容易なことではないだろうが、“完全体”となったハマのエースの姿を来季はぜひ見てみたい。

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