ハマ街ダイアリーBACK NUMBER

CSで5回2失点、DeNAのエース今永昇太がそれでも「申し訳ない」という言葉を使わなかった理由「“全部背負わなきゃ”が自分を苦しめていた」 

text by

石塚隆

石塚隆Takashi Ishizuka

PROFILE

photograph byHideki Sugiyama

posted2022/10/24 11:02

CSで5回2失点、DeNAのエース今永昇太がそれでも「申し訳ない」という言葉を使わなかった理由「“全部背負わなきゃ”が自分を苦しめていた」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

9月25日、ヤクルトの優勝がかかる一戦に登板した今永。今季ノーヒットノーランも達成したエース左腕がシーズンを振り返った

正直満足しているモノはひとつもない

 唸るようにして今永はそう言った。今季は左前腕の肉離れによりスタートが遅れたが、それでも5月上旬にチームに合流すると最後までローテーションを守り、21試合に登板し11勝4敗、防御率2.26、3年ぶりに規定投球回数をクリアした。また6月7日の日本ハム戦(札幌)ではノーヒットノーランを達成し、加えて8月の月間MVPを獲得するなど、昨季最下位から2位に躍進した今季のDeNAを引っ張っていく働きを十分にしてきた。ただ、これまでの話から察せられるように、スタッツや記録に関して今永の反応は淡白だ。

「そもそも出遅れがなければ、これらの数字は軽く超えていなければいけない。正直満足しているモノはひとつもないんです。本来先発であれば170~180イニングを安定して投げ、ときには中5日や中4日で行くことも辞さない。それができなかったわけですし、まわりは『出遅れたわりには』と気を使ってくれますが、そもそも出遅れた時点で満足できるシーズンではありませんでした」

 自分に対する厳しい目線。今永は自分ではエースだと自認はしていないが、ファンや周りの目は間違いなくそう見ている。DeNAに入団をして7年目、不振の時期はあったものの、その影響力と存在感は年を追うごとに大きくなっている。事実、三浦大輔監督も齋藤隆チーフ投手コーチも、5月に今永が合流してから「チームの雰囲気があきらかに変わった」と述べている。

自分のことだけを考えていいキャリアや年齢ではありません

 チームを背負う覚悟は今永にはある。誰よりも勝ちを求めるサウスポーは言うのだ。

「僕はもう自分のことだけを考えていいキャリアや年齢ではありませんし、時に苦しい気持ちになることもあるけど、そう思える人が(プロ野球界で)少ないことを考えれば、もっと自分の存在価値やチームでやるべき役割、それをやることへの意味を追求しなければいけない。せっかくこの世界でプレーさせてもらっているわけですし、それができないのはすごくもったいないなって。自分のハードルをどんどん上げられるようなマインドで野球をやりたいなって、今はすごく思っていますね」

 今永は“マインド”と言った。さらに絶対的な人間となるために、どのようにプレーをし、立ち振る舞えばいいのか。人間力も含め、その一端を垣間見たのが、先に今永が述べた神宮でのヤクルト戦とCS初戦の阪神戦だ。

【次ページ】 自分ひとりで全部やろうという気持ちを完全に捨てて…

BACK 1 2 3 4 5 NEXT
今永昇太
横浜DeNAベイスターズ
山本由伸
千賀滉大
三浦大輔
斎藤隆

プロ野球の前後の記事

ページトップ