迎えたバッターは山崎晃大朗。今永はストレートでファウルを奪いカウントを整えると、最後もストレートでファーストゴロに切って取りピンチを切り抜けた。

　しかしその後、DeNAはサヨナラ負けを喫してしまう。2年続けて目の前で繰り広げられた優勝胴上げの光景。多くの選手たちが「悔しい」と口をそろえるように語っていたが、今永だけは違う考えに至っていた。

©Hideki Sugiyama

「悔しかった」よりも「うらやましかった」

「優勝というモノは、選手ばかりでなく周りの人も幸せにするんだなって。神宮にいた大勢のファンが喜んでいたじゃないですか。本当にすごい力だなって」

　そう言うと今永は、若干苦笑してつづけた。

「やっぱ、うらやましかったですよね」

　今永自身、悔しくなかったはずはない。しかし、その想いを胸の内に秘め「次は俺たちやファンが幸せになる番だ」と誓うのだ。

　CS初戦の登板は、ホーム最終戦の試合前、三浦監督と廊下ですれ違うときに「わかっていると思うけど……」と告げられた。ここでも今永の心は動くことはなかった。

CS先発後の談話に感じられた今永の変化

「9月のローテーションを見ても予測ができたので驚きもせず『わかりました』と答えました。試合前の心境も僕は、普段と変わらずレギュラーシーズンの144試合目、今季22試合目の登板といった感じでした」

　特別な試合を特別だと思わないこと。それが核となる投手には必要だと今永は感じている。試合ではストレートがよく走り、5回2失点でゲームを収めた。結果的には負けてしまったが、興味深かったのが試合中に出された今永の談話だ。

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