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スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
箱根駅伝まで3カ月…青学大4位は波乱だったのか? 原晋監督が明かす「不安が的中しました」 駒大vs青学大の2強を追う“2つの大学”
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNanae Suzuki
posted2022/10/13 11:03
青学大のエース・近藤幸太郎(4年)。出雲駅伝3区を走り、駒大・田澤廉(4年)に1秒差の区間3位と実力を見せた
「3位は最低限のラインでした。うーん、悔しい(笑)。学生を勝たせてやれたんじゃないかという思いがありまして……やっぱり、万全の状態でないと、勝てないですね。ただし、全日本はみなさんがアッと驚くようなオーダーを組んで、勝ちに行きたいと思います」
この2校の指揮官は、「8区間の全日本ならば勝機あり」と見ているのだろう。10区間の長丁場、箱根駅伝になってくると話は変わってきて、層の分厚い学校――青学大が俄然、有利になってくる。
11月6日に行われる全日本は、三冠を狙う駒大、そしてチャンスをモノにしたい国学院、中央の思惑が交錯するが、当然のことながら青学大も黙ってはいない。原監督はいう。
「出雲でこういうレースになってしまった以上、全日本は勝ちたいですよ。ウチは駅伝に強い岸本(大紀・4年)、佐藤一世(3年)も戻ってきますから、しっかりと勝ち切れるオーダーを作ります」
“スーパー1年生”佐藤圭汰の区間新
おそらく、この4校の中から全日本の優勝チームが出てくることになるはずだ。
トラックシーズン、そして出雲を見て、優勝するためのキーワードが2個、浮かんでくる。
ゲームチェンジャーの有無。
上級生の安定。
今回の出雲で駒大が勝ち切ったのは、鳴り物入りで入学してきた1年生の佐藤圭汰が、最短区間の2区で首位に立ち、主導権を握ったからだ。順天堂大の「もはや世界基準」の三浦龍司(3年)を抑えての区間新は見事。佐藤の破壊力によって中央、青学大に先んじたことが優勝への原動力となった。
今回のゲームチェンジャーは佐藤であり、このスピード区間に起用した大八木監督の構想力が光った。
今回、前半で先頭に立つ意味は大きかった。各大学の指導者の話を総合すると、次のようになる。
「今回の出雲は、4区、5区と向かい風が吹いていたので、3区終了時点で先頭に立っていたチームが圧倒的に有利だったということ。先頭に立てば、逆風下であっても、中継車の後ろを走ることができる『防風効果』が大きかった」
2区で佐藤、そして3区には世界陸上を走り、疲れが溜まっていることは想像に難くないが、それでも「田澤廉」がいた。田澤は2位の青学大に20秒差をつけたが、この時点で勝負は決していたということだろう。
やはり、ゲームチェンジャーがいるチームは主導権を握れる意味で強い。
前回の優勝校、東京国際大が見せ場を作れなかったのは、破壊力抜群のヴィンセントの不在が大きかったわけで、6区間で争う出雲の場合、ゲームチェンジャーの有無が大きな差を生む。
その点、中央には1区で区間賞を獲得した吉居大和(吉居が次の箱根駅伝で1区を走るとするなら、各校はその対策を決めておかなければならない)、国学院には4区で区間賞を獲得した中西大翔がおり、彼らはゲームを動かせる選手たちだ。
青学大がやはり“浮上してくる”理由
そして全日本からは区間距離も長くなり、上級生の安定性が勝負の鍵となってくる。そこで浮上してくるのが青学大だ。