Number World Cup ExpressBACK NUMBER
中田英寿、小野伸二、稲本潤一…才能の惑星直列のごとき日本代表が躍進した日韓W杯と、ソウルのウォーターベッドの記憶
text by
近藤篤Atsushi Kondo
photograph byAtsushi Kondo
posted2022/10/11 11:00
稀代の才能が集結した2002年の日本代表の中で、ひときわ強い輝きを放った中田英寿(右)と小野伸二
僕はそのリストの最後に自分の名前を書き加え、彼女に聞いた。「あの、今日の午後3時までの便に乗れる可能性はどのくらいありますか?」。彼女はちらと僕をクールに眺め、デスクの下から一枚のボーディングパスを取り出すとこう答えた。「これで次のフライトに乗れますから、受け取りのサインをお願いします」
??? いったい何がどうなっているのか全くわからなかったけれど、僕はありがたくそのパスを受け取り、書類にサインをすると、猛ダッシュで出国手続きのゲートへと走って行き、無事その日の夜の埼スタでブラジル対トルコの試合を撮る事ができた。
観客席から見た大会の終わり
その4日後、2002年日韓W杯はブラジルの優勝で幕を閉じる。
僕はこの決勝戦、カメラマン数の関係でピッチには入れてもらえず、観客席から写真を撮ることになった。会場となった横浜国際スタジアムはスタンドからピッチまでずいぶんと距離があるので、いい写真はほぼ撮りようがない。試合開始前にカメラマンとしての僕のW杯は終了、あとは観客気分で試合を撮るというよりは眺めていた。
主審のイタリア人コッリーナ氏は90分間まともな笛を吹き続け、前線に3R(ロナウド、ロナウジーニョ、リバウド)を揃えたブラジルは、相当強いはずのドイツ相手に特に苦労することもなく、後半ロナウドが決めた2点を守り切って5度目のワールドカップを手に入れた。
試合終了後、ゴールポストに背中をつけて座り込んだドイツの守護神オリバー・カーン、表彰式でトロフィーを掲げて喜ぶブラジルチーム、そして僕の陣取ったカメラマン席のすぐ下の通路を歩き過ぎてゆく藤原紀香さん。僕にとっての2002年6月の記憶はここで終わることとなる。