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中田英寿、小野伸二、稲本潤一…才能の惑星直列のごとき日本代表が躍進した日韓W杯と、ソウルのウォーターベッドの記憶
text by
近藤篤Atsushi Kondo
photograph byAtsushi Kondo
posted2022/10/11 11:00
稀代の才能が集結した2002年の日本代表の中で、ひときわ強い輝きを放った中田英寿(右)と小野伸二
そして我らがサムライブルーは、初戦のベルギーを相手に2−2で引き分けた後、続くロシア戦では1−0で勝利、第三戦のチュニジアにも2−0で快勝し、見事グループ首位でベスト16へと駒を進めた。もし史上初めての予選リーグで敗れた開催国になったらどうすんだ! そんな危惧する声が大会前にはあったが、蓋を開けてみれば日本代表は堂々たる戦いを演じてみせた。
今になって思えば、あのチームには中田英寿、小野伸二、稲本潤一といった、錚々たるメンバーがいた。まるで何世紀かに一度起こる惑星直列のように、日本サッカー史上最高の才能を持った世代だったと思う。だから、ちゃんとした準備をして、ちゃんとした戦術で挑めば、それなりの結果は残せて当然だったのかもしれない(だって中田と小野が中盤にいるんだから)。
彼らの才能をもってすれば日本はベスト16どころか、ベスト8まで進めるポテンシャルをじゅうぶん秘めていたような気もする(ベスト8の相手はセネガルだったから、そこも突き抜けてブラジルとの準決勝に臨んでいたかもしれない)。しかしながら、グループリーグ突破で「名監督」と評されたエキセントリックなフランス人は、ベスト16のトルコ戦でなぜか奇策を思いつき、自ら崩壊してしまった。だから、個人的には残念だという印象が強い。
謎のボーディングパス
6月26日、仁川空港にタクシーがついた時、乗るはずだった飛行機は離陸した後だった。W杯開催中、ソウルー東京間のフライトを確保するのは一苦労だった。特に決勝ラウンドに入ってからは、一つの試合ごとに多くのファンとメディア関係者が大移動を繰り返していた。
僕は航空会社のチケッティングカウンターに行き、係の女性に乗り遅れた航空券を差し出した。彼女はデスクの上に置いてあったウェイティングリストを僕の方に押し出し、「ここにあなたの名前を書いてください」とクールに言った。リストには無数の名前が書いてある。こんなにたくさんの人がラブホで寝過ごしたのだろうか。