「プロ野球史上に残る大投手になる」

　第1戦では味方が同点に追いついてくれた直後に失点するなど試合をコントロールし切れなかった。しかし、この日のダルビッシュは違った。スクイズで1－1の同点に追いついたあとの6回表は1死二塁から2者連続三振に切って取り、さらに2点を勝ち越したあとの7回表は1番からの好打順だったが三者凡退に抑え、力と気迫で試合を完全に支配した。

　白井はこの試合でひとつの確信を得た。

「それまでは変化球投手という印象だったけど、このときは完全に豪腕投手というイメージ。リリーフのとき、こいつは普通じゃないなと思った。それでシリーズ第5戦の投球を見て、今後、彼は間違いなくプロ野球史上に残る大投手になると思いましたね」

　じつはこの試合、監督のヒルマンはダルビッシュを完投させるつもりでいた。しかし8回途中、白井がダルビッシュの投球フォームの異変に気づき、交代を進言した。

「明らかに変な投げ方をしていましたからね。肩か肘に違和感があったようです。でも監督は投げさせたかったらしくて。初めて監督とあんなに激しくやり合いましたよ（笑）」

　結局、このあと日本ハムは岡島秀樹、MICHEALという必勝リレーで4－1で逃げ切り、44年ぶりの日本一の美酒に酔った。

　ダルビッシュは翌年からアメリカヘ渡るまで5年連続で防御率1点台をマークすることになる。まさに'06年の日本シリーズをきっかけに、球界に君臨するようになったのだ。

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