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16年前、ダルビッシュ20歳が覚醒した日本シリーズ第5戦…“その瞬間”を日本ハム当時コーチが証言「間違いなくプロ野球史に残る大投手に」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byJIJI PRESS
posted2022/10/25 06:00
2006年日本シリーズで44年ぶりの日本一に輝いた日本ハム。優勝を決めた第5戦のマウンドにダルビッシュ有20歳がいた
白井は「もしかしたら覚醒したんじゃないかと思った」と振り返る。中3日で6回からマウンドに登り、2イニングを投げて1安打無失点に抑えた。その内容が圧巻だったのだ。全26球中、当時の自己最速となる150kmを4度もマーク。3者連続三振も披露した。
「初めて全力で投げるダルビッシュを見た。ボールが違いましたから。これまでは全力で投げたら壊れちゃうんじゃないかというのがあったんでしょうね。でも、この年の後半から体ができつつあったし、リリーフなので短いイニングでよかった。これはプレーオフ、日本シリーズと、どこまで行っちゃうんだろうと思いましたね」
ダルビッシュをリリーフにつぎ込んでまでつかんだ最終戦の勝利で、日本ハムはシーズン1位通過を達成。ソフトバンクとのプレーオフでは、初戦でダルビッシュが完投勝利を収めるなどストレートで勝ち抜けた。
06年日本シリーズ「新旧世代エース対決」
ナゴヤドームで開催されたシリーズ初戦も、当然のようにダルビッシュが先発マウンドに上がった。対する中日の先発は当時、絶頂期にあった川上憲伸である。
川上に勝たなければ日本ハムの優勝はありえなかった。が、その日のダルビッシュは5四死球と珍しく制球を乱した。そして、自分の守備のミスなどもからんで6回3失点で降板、チームも2-4で敗れた。
ただし、当時の日本ハムは、'07年以降のようにそこまでダルビッシュに依存していたわけではない。白井も「チームもそんなに落ち込んでいなかった」と話す。
第2戦を八木で取り返した日本ハムは、1勝1敗で札幌に戻った。そして得意のホームで第3戦、第4戦も勝利し、3連勝を飾る。第5戦は再びダルビッシュと川上の新旧世代のエース対決となった。
日本ハムは、この試合で決めるつもりで臨んでいた。白井が話す。
「うちは満員の札幌ドームでは、ほとんど負けたことがなかった。川上に連敗し、敵地に行ったら流れは向こうに行ってしまう。それはダルビッシュもわかっていたはず。若いけど、そういうクレバーさは持っていました」