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16年前、ダルビッシュ20歳が覚醒した日本シリーズ第5戦…“その瞬間”を日本ハム当時コーチが証言「間違いなくプロ野球史に残る大投手に」
posted2022/10/25 06:00
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
JIJI PRESS
16年前の日本シリーズ。初戦先発という栄誉を担ったプロ2年目・ダルビッシュ有は、日本一を決めた第5戦で、試合を完全に支配する。このマウンドこそが、豪腕伝説の始まりだった。Sports Graphic Number838号(2013年10月3日発売)の記事『ヘッドコーチが見た怪物の覚醒 2006 日本ハム×中日 第5戦』を特別に無料公開します。
153km――。
弱冠20歳のダルビッシュ有が、また自己最速記録を更新した。
2006年10月26日。日本ハムが中日に3勝1敗で王手をかけて迎えた日本シリーズ第5戦、日本ハムの先発はプロ2年目のダルビッシュだった。満員の札幌ドームが若きエースの球速表示にどよめいたのは、3回表2死三塁、3番・福留孝介への2球目だった。
当時のヘッドコーチ、白井一幸が語る。
「それまでは先発して150kmを超えるなんてことは、まずなかったですから」
今では何でもない数字だが、その頃のダルビッシュからすると別人のような球速だった。体重は80kg台半ば。筋骨隆々としている今とは違い、まだひょろりとしていた。
「もしかしたら覚醒したんじゃないか」
ダルビッシュは入団1年目こそ5勝どまりだったが、この2年目に飛躍した。10連勝を記録するなど12勝5敗と大きく勝ち越し、八木智哉と並んでチームの勝ち頭となった。
しかし、言ってみれば、それでもまだ五分咲きだった。一気に開花を促したのは9月27日のレギュラーシーズン最終戦、ソフトバンクとの一戦だった。その試合でダルビッシュは初めてリリーフを任された。