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「代表に選ばれないのは悔しい」「優磨くんのそこは見習わないと」選手権得点王・パリ世代の染野唯月がヴェルディで誓う“挫折のち逆襲”
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAtsushi Iio
posted2022/09/22 11:03
パリ五輪世代の得点源としても期待される染野唯月。3年前の選手権得点王が考える現状、そして今後の自分とは?
「勝負の年」と位置付けていた今シーズン、コンスタントにベンチ入りして途中出場の機会は得ていたものの、なかなかスタメンの座は射止められなかった。
それもそのはず、鹿島の前線に君臨していたのは、上田綺世と鈴木優磨という国内最強の2トップ。さらに、20年シーズンに18ゴールをマークしたエヴェラウドも控えている。
20歳のストライカーの前にそびえる壁は、極めて高かった。
「なかなか難しかったですね……。綺世くんとエヴェラウドは体が強くて、生粋のストライカー。そこで戦っても絶対に勝てない。どちらかというと、僕は優磨くんを意識していたというか」
優磨くんはボールを収められるし、ゴール前にも
鈴木優磨はチャンスメイクもゴール奪取もできるオールラウンドなFWである。染野も同じカテゴリーのストライカーと言える。
「優磨くんは下がってボールを収められるし、パスをさばいてゴール前にも入っていける。自分はそこで戦わないといけないと思っていました。そこを優磨くん以上に高めていかないといけないなって。負けてない自信はあったんですけど……」
スタメンの座を奪い取るには、途中出場で結果を出し続ける必要がある。5月25日のサガン鳥栖戦で待望のリーグ初ゴールを奪ったものの、与えられる数分間ではゴールを積み重ねることができず、染野は環境を変える必要性を感じ始めるのだ。
5月のパリ世代国内合宿で増した“危機感”
5月半ばに行われたU-21日本代表のキャンプが、さらに危機感を増加させる。
24年のパリ五輪でのメダル獲得を目指し、大岩剛監督率いるU-21日本代表が立ち上げられたのは今年3月のことだった。
01年生まれの染野は、パリ五輪代表の最年長世代に当たる。しかし、3月上旬の国内合宿のメンバーにも、3月下旬のドバイカップのメンバーにも染野の名前はなかった。
5月半ばの国内合宿のメンバーにも当初は入っていなかったが、数人の辞退者が出たために追加招集された。
その合宿中、染野は「自チームで試合に出ないと、この先も選ばれない」と語った。実際に代表メンバーの多くは、所属クラブで継続して試合出場を果たしている者ばかりだった。さらに、最終日に組まれた大学生との練習試合が、染野の気持ちを揺さぶった。
FWではなく、インサイドハーフとして起用されたのである。
試合後、「やったことのないポジションだったんですけど、もっともっとボールに関わってチャンスメイクができたら良かった」と反省していたが、改めてその当時の心境を語る。