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“マイノリティの星”セリーナ・ウィリアムズ40歳はテニス界をどう変えた? 大坂なおみ「ウィリアムズ姉妹がいなければ、今のわたしは存在しない」
text by
内田暁Akatsuki Uchida
photograph byGetty Images
posted2022/09/17 17:03
9月2日、全米オープン3回戦でトムヤノビッチに敗れ、コートを去ったセリーナ
アフリカ系アメリカ人、ロサンゼルスのゲットー出身、女性、母親――。
彼女が内包する多彩で多様な側面に、多くの人々は自分の姿を投影する。グランドスラム優勝4度の大坂なおみや、現在18歳にして世界8位につけるココ・ガウフは、セリーナへの憧憬や敬意、そして恩恵をまっすぐに口にする“後継者”たちだ。
「ウィリアムズ姉妹がいなければ、今のわたしは存在しない」と明言するのは、セリーナに憧れ抜いた大坂である。ウィリアムズ姉妹の父、リチャードの自伝を読んだ大坂の父は、そのサクセスストーリーに感銘を受け、二人の娘にテニスを教え始めた。ジュニア大会には出さない方針も、ウィリアムズ姉妹の足跡から学んだこと。その末に世界1位に至った大坂は、自身を「ウィリアムズ姉妹の産物」だと定義した。
なぜなら世界1位の選手が、自分と同じような見た目だったから
大坂より6歳若く、ウィリアムズ姉妹の全盛期に生まれたガウフは、セリーナに過剰な共感を抱く必要なく育った世代と言えるかもしれない。
「わたしはこれまで、疎外感を覚えることなくテニスの世界で育ってきた。なぜなら世界1位の選手が、自分と同じような見た目だったから」
セリーナがもたらした恩恵を、ガウフは実体験を交えて簡潔に述べた。
人種や出自の壁の打破と並び、セリーナがテニス界にもたらした「革命」として指摘されるのが、“パワーテニス”である。時速200キロを超える超高速サーブに、コートを縦横に駆ける高い運動能力、そしてどこからでもウイナー(ノータッチでのポイント)を奪える強打——セリーナのプレーを語る時、必ず言及されるのが「フィジカルの強さ」だ。
テニスの可能性と多様性を広げたセリーナの技術
ただ、実際に対戦した選手たちが口にするセリーナの強さの精髄は、周囲が表層的に捉える印象とは異なることが多い。