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“マイノリティの星”セリーナ・ウィリアムズ40歳はテニス界をどう変えた? 大坂なおみ「ウィリアムズ姉妹がいなければ、今のわたしは存在しない」
posted2022/09/17 17:03
text by
内田暁Akatsuki Uchida
photograph by
Getty Images
9月10日の全米オープン女子決勝は、どちらの選手が勝っても、新たな歴史が生まれる顔合わせとなった。
第1シードのイガ・シフィオンテクは、ポーランド国籍の選手として初の全米オープン決勝進出。
対する第5シードのオンス・ジャバーは、母国チュニジアの選手としてのみならず、アフリカ大陸出身、そしてアラブ系女性としても初の同大会決勝進出者となった。
40歳の“レジェンド”セリーナ・ウィリアムズの引退興行的な盛り上がりを見せた今年の全米オープンで、最終決戦の場に残ったのは、ポーランドとチュニジアの選手。地元ファンの関心が薄れる懸念もあったが、決勝戦当日のチケット(ダイナミック・プライシングを採用)は最も安い席でも300ドル前後(約4万3000円)、コートサイドでは約4000ドル(約57万円)の高値がついた。スタンドのそこかしこに揺れるポーランドとチュニジアの国旗が、この国の“移民の大地”としての顔を誇らしげに映す。多様で開けた合衆国の世界観が、2万5000人を収容する最大のテニス専用競技場に広がっていた。
セリーナが開拓した黒人女性選手の新天地
そしてその光景は、プロ選手の出場が解禁されたオープン化以降、“初の黒人女性選手”としてセリーナ・ウィリアムズが23年前に全米オープンを制したことで、ひらかれた新天地でもあるだろう。
「とても寂しく思っている。だって私も、あなたたちと同じくらいに、セリーナのことが大好きだから……」
全米オープン3回戦。コート上で行われた勝利インタビューでそう語ったのは、セリーナのキャリアにピリオドを打つ損な役割を引き受けた、アイラ・トムヤノビッチだった。