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プロ野球記録「バレンティンの60発」はいかに生まれた? ヤクルト同僚&対戦相手の証言「ああいう性格だから(笑)」「初球の打率、知っとる?」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKYODO
posted2022/09/13 11:01
2013年9月15日にプロ野球記録となる56号を放ったヤクルト・バレンティン
55号を献上…カープ大竹「投げミスではなかった」
54号の翌日、広島の大竹寛から放った日本記録に並ぶ55号は、まさにバレンティンのそんな高度な技術を見せつけた一打だった。
「記録のことは意識していた」と話す大竹は6回2死走者なしの場面で、1ボール1ストライクからの3球目、アウトローに147kmのストレートを投げ込んだ。そのボールをバレンティンは左手一本で神宮球場のライトスタンドヘ押し込んだのだ。
しかし大竹は失投ではないと断言する。
「やっぱそこも打つか、って感じでしたね。バレンティンにとっては、あそこもホームランゾーン。ボール1つ、2つ高かったかもしれない。でも、その前に打たれたホームランは甘いところに入ってしまいましたけど、55号は決して投げミスではなかったですね」
大竹はこの1本を含め、今季、個人最多となる4本塁打をバレンティンに献上した。
「今年のバレンティンはとにかくボール球を振らなかった。弱点っていう弱点はない。弱点があったら、そこを攻めてますよ。あとは配球の中で、より厳しく見せていくしかないでしょう。インハイをしっかり突いて、外の際どい変化球で打ち取るとか」
相棒の証言「(翌年は)どこまで集中できるかでしょうね」
122試合目、史上最速での55号到達だった。あと22試合を残していただけに、まだまだ記録を伸ばすかと思われたが、最終的には60号で打ち止めとなった。
「よくこんなもんで済んだ」と語るのは池山だ。「出遅れて60本ですよ。来年、フルで出たら、もっと打てるんじゃないですか」
田中の予想はこうだ。「70号はいくやろ。それは無理でも65号は打つな」
ただし、バレンティンの性格を熟知している相川はこう言うことを忘れない。
「ああいう性格だから(笑)。来年も、どこまで集中できるかでしょうね」
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