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プロ野球記録「バレンティンの60発」はいかに生まれた? ヤクルト同僚&対戦相手の証言「ああいう性格だから(笑)」「初球の打率、知っとる?」 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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posted2022/09/13 11:01

プロ野球記録「バレンティンの60発」はいかに生まれた? ヤクルト同僚&対戦相手の証言「ああいう性格だから(笑)」「初球の打率、知っとる?」<Number Web> photograph by KYODO

2013年9月15日にプロ野球記録となる56号を放ったヤクルト・バレンティン

 5月終了時点でブランコ21本、バレンティン14本とまだ7本リードされていた。が、6月を終えると二人は25本で並んでいた。ブランコのペースが急激に落ちたのに対し、バレンティンは少しずつペースアップしていったのだ。

8月中に18発…52本に到達した

 二人の分岐点は5月半ばから約1カ月間続いた交流戦だった。交流戦でブランコは5本にとどまったのに対し、バレンティンはその倍の10本を記録。スコアラーの田中は「インコースの対応力の違い」だと分析する。

「ブランコは速いボールでインコースを突かれて、フォークを落とされるみたいなのがあかんねん。でもパ・リーグはそんなピッチャーが多かった。その点、バレンティンの方がインコースの対応力はある。ブランコはあそこから崩された感じがするわな」

 バレンティンは6月に11本、7月に9本と着実に積み重ね、8月には池山が「振ったらバットにボールが吸い付いていった感じ」と振り返るように一気に18本を上積み。ついに50本の大台を突破し、52本に到達した。1カ月以上も残し、早くも王貞治らが持つシーズン記録55本を射程圏内に捉えた。

そして9月は“3試合連発”で…

 バレンティンにとっての最大の山場は、記録達成は時間の問題だと思われた9月だった。インコース攻めがさらに厳しくなり、苛立ちを募らせたバレンティンが無理なバッティングを見せ始めた。そんなとき、よきアドバイザーとなったのが宮本だった。宮本はバレンティンをこうたしなめた。

「おまえ、それだけはやめておけ。このまま試合に出続ければ、記録は絶対につくれるから。ムキになって打ちにいったら、手首に当たって骨折するぞ。今のままでいいんだ。今は打てへんかっても、いずれ出るから」

 そんな助言の効果もあり、9月8日に8月30日以来、6試合振りとなる53号が飛び出すと、そこからは完全に自分を取り戻した。3試合連発で、一気に55号に並んだのだった。

 とかく規格外のパワーばかりが注目されるバレンティンだが、野球の動作解析を専門にする金沢星稜大の准教授、島田一志は「技術的には王さんより上」と太鼓判を押す。

「ボールを捉えたあと、手首を返さずバットを前に放り投げるようにフォロースルーをとる。あれが飛距離の秘密。あの技術を持っている右打者を見たのは初めてです。左打者で言えば王さんに似ている。でも王さんは中に入ってくる変化球が多かったから、引っ張りが多かった。一方、バレンティンは外に逃げていく変化にも対応しなければならないので、右手を離し、左手一本で右方向に押し込むこともできる。あの技術はすごいですよ」

【次ページ】 55号を献上…カープ大竹「投げミスではなかった」

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