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「野村さんに手紙を書きたいんやけど」清原和博が巨人・番記者に相談した野村克也監督への想いと銀座の夜「久しぶりに、会わないか?」 

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鈴木忠平

鈴木忠平Tadahira Suzuki

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photograph byBUNGEISHUNJU

posted2022/09/07 11:19

「野村さんに手紙を書きたいんやけど」清原和博が巨人・番記者に相談した野村克也監督への想いと銀座の夜「久しぶりに、会わないか?」<Number Web> photograph by BUNGEISHUNJU

巨人時代の清原和博

「お前と飲むなんて何年ぶりかな......。きょうは俺がお前に礼をする日やから」

   自らすすんで他者と会うのは久しぶりのことだった。2月というのはただでさえ冷たい手錠の感触が思い出され、部屋に閉じこもりがちな季節だった。それに加えて、この年はさらに憂鬱なニュースが流れた。

 あるミュージシャンが覚醒剤所持によって逮捕された。再犯だった。その人物は初犯のあとに音楽界へ復帰してから10年以上の月日が経過していたが、再び同じ闇に落ちたのだ。その事実が清原を打ちのめした。

「もうすぐ執行猶予が明けますね」「いよいよですね」

 まわりの人間はそう口にする。その日がくれば、まるですべてが新しく生まれ変わるとでも言うように。ただ、司法上の刑罰権が消滅したからといって体内に流れる血がすべて入れ替わるわけではない。まして10年以上経っても抜け出せないトンネルならば、束の間、陽の光を浴びることにどんな意味があるというのだろうか。ニュースを目にした日から清原の頭の中にはそんな考えがぐるぐると巡るようになった。何もする気が起こらなかった。

テレビ局から依頼された野村克也への手紙 

 テレビ局からある依頼が舞い込んだのはそのころだった。逝去したプロ野球界の巨星、野村克也に向けて手紙を書いてほしいというのだ。

 野村とは縁があった。西武ライオンズに入団してまもなく、頭のサイズに合うヘルメットが見つからなかった清原は、かつて野村が使っていたものを倉庫から引っ張り出して使用した。以来23年間、ユニホームが変わってもそのヘルメットを塗り直して打席に立ってきた。だから恩人に言葉を贈りたい気持ちはあった。 

【次ページ】 ”清原番”への電話「野村さんに手紙を書きたいんやけど」

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