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「グラウンドで亡くなることもいとわない」選手権6度優勝、帝京元監督・古沼貞雄83歳が今も出張指導を続ける理由「どうしようもなくサッカーが好きなんです」
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byYuki Suenaga
posted2022/09/03 17:00
最近の毎朝の楽しみは「大谷の活躍」。野球やバスケも熱心にテレビで観戦し、何かを学ぼうとする姿勢に変わりはない
「人の話を聞くこと。聞く耳を持つことは良い指導者になる上で、とても大事な要素だと思います」
気がつけば、周囲は年下の指導者たちばかりになったものの、幅広く交流を持ち続け、常に学ぶ姿勢を持っている。帝京時代の教え子である大津高校を率いる平岡監督のミーティングは感心させられることが多く、メモを取ったりもする。35年以上、書き続けている日誌をめくると、印象深い出来事、人から聞いた言葉などが事細かに記されている。
83歳とは思えないほどかくしゃくとしている古沼さんの指導熱が冷めることはない。
あの指導者との意外なつながり
「目が見えるうちは、たとえ自分の足で歩けなくなり、車イスになっても、現場に連れて行ってくれる人がいれば、サッカーの試合に行くでしょうね。私はグラウンドで亡くなることもいといません。女房には『バカ言ってんじゃないよ』と言われますけどね」
いまも日本サッカー界に多くの人材を送り出している名伯楽は、生涯、現役の指導者にこだわり続けるつもりだ。
そんな古沼さんをもってして、サッカーにかける熱量がすさまじいと舌を巻いた指導者がいる。イビチャ・オシムだ。
「ジェフの監督時代に『面白い練習をする監督がいるよ』と聞きまして、見学に行ってから交流が始まりました。彼のほうが歳は2つ下で、お酒を飲んでいる時なんかは普通のおじさんなんだけど、サッカーのことになるとね……」
語られたのはイビチャ・オシムとの意外なつながりだった。
(オシムとの交流秘話編へ続く)