藤沢調教師をして『これはとんでもない馬だな』

　スワンステークスとマイルチャンピオンシップでは、岡部さんは春に高松宮杯を勝ったシンコウキング（藤沢和雄厩舎）の騎乗が決まっていて、タイキシャトルには横山典弘騎手が乗ったが、問題なく連勝する。さらに岡部さんが戻ったスプリンターズステークスも直線の中ほどであっさりと抜けだしてきた。2着とは1馬身3/4差。どんなに余裕があっても2着を大きく引き離さないのは岡部さんの流儀だ。この日、藤沢さんは香港国際ボウル（GⅡ、3着）に出走したシンコウキングにつきそっていたが、タイキシャトルがほんとうに強い馬だと確認したのがこのレースだった、とのちに語っている。

「帰国してレースをビデオで見たら、『これはとんでもない馬だな』と思ったほど、すごい競馬でした」

　どんなにいいレースをしても「じょうずな競馬」と表現する藤沢さんに「すごい競馬」と言わせただけでも、タイキシャトルは「すごい馬」だ。

ジャックルマロワ賞制覇時の一枚。一番左が藤沢　©AFP/AFLO

「いい予行練習になった」安田記念

　4歳になると、京王杯スプリングカップをレコードタイムで勝ち、安田記念に向かう。安田記念は雨、不良馬場だった。あの日のパドック、どしゃ降りの雨のなかでも栗毛が黄金色に輝いて見えたほどタイキシャトルには別格の存在感があった。事実、馬場状態などタイキシャトルの前では取るに足らない問題だった。直線では外から追い込んできて、ゴールの100m手前で香港のオリエンタルエクスプレスを抜き、2馬身半の差をつけて勝った。

「フランスのドーヴィルは馬場が悪いから、きょうのレースはいい予行練習になったと思います」

　岡部さんは淡々と語った。夏にフランス遠征を計画していたタイキシャトルには、タフなコースを想定したレースを経験させるという意味でも、安田記念は格好のステップレースとなった。

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