そう語る松井は、トップチームの監督を任されるような指導者が持つ資質として、「選手のモチベーションをコントロールできる言語化能力」や、「試合で活きるような練習メニューを提示する能力」を挙げる。

　ただ、優れた監督になるには、それ以外の要素も必要であり、そして、それがガルティエにはあったという。

「『顔』です。ガルティエは強面なので、顔で威嚇できる。選手に『この人の言うことを聞かないといけないな』と思わせられるんです（笑）」

2008-09シーズン、サンテティエンヌでプレー。当時、クリストフ・ガルティエ（現PSG監督）がアシスタントコーチを務めていた　©AFLO

　かつて日本代表を率いた名将も、そうだったと松井は考えている。

「オシムさんは、少し怖い雰囲気がありましたよね。だから、オシムさんから言われることを、選手は必死で聞いていました。顔は、努力では変えようがない、持って生まれたものですけど、実はけっこう重要なんです」

「ゴールすると愛車がピカピカ」「負けるとボルボがボコボコ」

　PSGはスーパースターが揃っているし、エムバペにはクラブの様々な意志決定にかかわる権利が与えられていると報じられているが、それはリーグ・アンのカルチャーを考えれば、荒唐無稽なものではないと松井は考えている。

「僕がいた頃からそうでしたけど、フランスでは、監督より選手の力が強いくらいなんです。グアルディオラぐらいの名将ならば話は別ですけど、基本的には選手のほうが監督よりも高い給料をもらっているわけで。エムバペ、ネイマール、メッシのような選手になれば、好き勝手なことを要求できる部分はあると思います。でも、ガルティエがそういう選手たちをどう操縦するのかは楽しみですよね。あれだけの選手たちにどうやって守備をやらせるのかなど、個人的に聞いてみたいですね」

　そして松井は、ガルティエはのしかかる大きなプレッシャーに耐えうるだろうと考えている。それは、彼がアシスタントコーチとして約1年、監督としておよそ7年半にわたって指揮してきたサンテティエンヌにも独特の環境があるからだ。

「そもそも、サンテティエンヌの街にはほとんど何もないから、サッカーにかける熱がすごいんですよ。街を歩いていると、『今度の試合、頑張れよ！』としょっちゅう声をかけられるような感じなので」

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