甲子園の風BACK NUMBER
昨夏の王者・智弁和歌山がまさかの敗退…“背番号1”を重んじる中谷仁監督を悩ませた“ダブルエース”の存在「僕の経験不足」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKYODO
posted2022/08/14 11:05
春の近畿大会では大阪桐蔭の連勝記録を止めるなど、今年の夏も優勝候補の一角に挙げられていた智弁和歌山。勢いに乗る国学院栃木を前に悔しい敗退となった
けれど監督の采配がすべてではない。選手も1人1人、自分の課題から逃げずに敗戦と向き合っていた。
武元は、「監督には『しっかり思い切って、(捕手の)渡部(海)のミットに投げてこい』と言われました。でも自分のピッチングで流れを作れず、ピンチで粘れず、すごく悔いが残ります。甘くなった球を捉えられた。この2年半、ずっと練習してきたんですけど、まだ甘い部分があり、それがこの試合に出てしまったのかなと思います」と一言一言、噛みしめるように言った。
昨年主力の1人として優勝を経験した、主将で4番の岡西佑弥は、この日、無安打に終わって最後の打者となり、涙にくれた。それでも試合後は冷静に振り返った。
「(国学院栃木は)うちのチームの塩路、武元をしっかりと捉えてきているあたりが素晴らしいチームだなと思いました。まだまだ個人として実力が足りていない、甲子園は、そういうことを知らせてくれる場所でした」
キリリと前を見据えて答えるキャプテンのその姿に、“前年王者”の看板を背負い続けた意地とプライドが垣間見えた。
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