令和の野球探訪BACK NUMBER
柳田悠岐を彷彿とさせる注目の大器。
Y校復活へ投打で鍵を握る笹川吉康。
posted2020/08/12 07:00
text by
高木遊Yu Takagi
photograph by
Yu Takagi
鋭くかちあげたバットにボールが当たると瞬く間に野手の間を抜けていく。さらに大きなストライドでどんどんと大地を蹴り上げていくと、あっという間に二塁に到達した。
そんな昨夏の大会でのプレー動画をたまたま目にした。
その大型打者の名は笹川吉康(3年)。2度の準優勝、甲子園出場16回を誇る伝統校・横浜商業“通称Y校”が新たに産み出そうとしているスター候補は、柳田悠岐(ソフトバンク)のようなスケール感が大きな魅力だ。
現在の身長は193cm、体重は86kg。そして左利き。バレーボールなどの他競技からも触手が伸びそうな恵まれた体躯を持つ。横浜で生まれ育ったものの、もともとプロ野球を観ることはなかったとのことで、きっかけ1つでは違う競技の有望選手となっていたかもしれない。
名門・中本牧リトルシニアで磨く。
野球界に導いたのは友人の父。鹿児島実業出身だったその人は、小学3年時の運動会で素早く走る笹川少年を見つけ「野球をやらないか?」と誘った。そこから野球の楽しさに気づくと、中学時代は、NPBに森野将彦(元中日)ら12選手を輩出している全国屈指の名門・中本牧リトルシニアでプレー。笹川の代で全国大会出場はなかったが、「様々なことが中学生レベルではなく、高校でそのまま使えるようなものでしたし、頭を使う野球を教えてもらいました」と名門のエッセンスを存分に吸収した。
それでも当時はまだ十分な自信は持てずにいた。「横浜高校などの強豪校へ行くと、レギュラー争いが激しくて、もしかしたら3年間試合に出られないかもしれない」と素直に思った。そこで「自分が活躍できて、強くて、家が近いところが良い」とY校に決めた。
だが入学してみると「思っていたよりもレベルが高かったです。指導者も施設も充実していますし、自分たち次第で、甲子園に行けるレベルのところだなと思いました」と話すように、想像以上の環境がより好素材に磨きをかけることになる。