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山田陽翔「近江高校に入ってよかった」…劣勢でも崩れない“強さの理由”とは? 取材中、山田の顔がほころんだ“ある質問”
posted2022/08/14 17:00
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Nanae Suzuki
日本一を目指す近江の揺るぎなき信念。その幹がさらに太くなる。
養分を与えたのは、ふたつの不覚だ。
初戦。浮足立つ仲間に山田は…
鳴門との初戦で、近江は立ち上がりから流れに乗り切れていなかった。
1-1の2回。サード・中瀬樹のエラーで先頭バッターに出塁を許すと、2死三塁からショートの横田悟も捕球を乱し、1点を献上してしまった。「守備から流れを作り攻撃に繋げる」ことを伝統とする近江としては、意気消沈してもおかしくない失点である。
だが、近江は沈まなかった。
不安定だった舵を支えたのは、1回に同点となるツーベースを放っていたエースで4番のキャプテン、山田陽翔である。
「守りからリズムを作ってバッティングに繋げていくことは序盤なかなか難しかったですけど、打たせて取っていく以上はエラーがつきものだと思っています。そこから修正してくれればいいことなので」
エラーをした中瀬と横田に山田が声をかける。「大丈夫」。そこからはストレートで押し切ろうとせず、「三振を取れるボールを意識した」と緩急を意識した配球にシフトし、3回は2奪三振を含む三者凡退。自らのピッチングでチームに流れを与えた。
監督の多賀章仁が唸る。
「山田は仲間がエラーをした時こそ、『しっかり投げないかん!』と。まさにマウンド上でのキャプテンシーですよね」
精神的支柱に触発されるように、副キャプテンの津田基がセカンドから声を飛ばす。
「開き直っていこう!」
山田がピッチングでチームを整え迎えた5回、2死一、二塁から「ミスをして暗い気持ちになってしまいましたけど、周りの声で切り替えられた」と、横田のスリーベースなどで3点を奪い逆転。6回に1点、7回にも3点と、鳴門の注目左腕・冨田遼弥を攻略した。