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村上宗隆22歳が「必然のホームランバッター」であるワケ。松井秀喜にもなかった特別な能力とは? 《世界新の5連発を検証!》 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byKYODO/BUNGEISHUNJU

posted2022/08/04 11:01

村上宗隆22歳が「必然のホームランバッター」であるワケ。松井秀喜にもなかった特別な能力とは? 《世界新の5連発を検証!》<Number Web> photograph by KYODO/BUNGEISHUNJU

史上初の5打席連続本塁打を放ったヤクルト村上宗隆(左)と巨人時代の松井秀喜(右)

 王さんと松井さんの2人は基本的にはプルヒッターで、逆方向への打球は狙って打っていたわけではなく、「行ってしまった」打球がほとんどだった。

 しかし現在の野球では、ただ引っ張るだけでは40本、50本とホームランをなかなか量産できなくなっている。そこに村上がいまの野球が生み出した必然のホームランバッターと感じる理由がある。

逆方向に狙って打てなければ…

 いまからかれこれ20年近く前の2003年オフだった。当時、ニューヨーク・ヤンキースでプレーしていた松井秀喜さんが、メジャー1年目を終えてこんな感想を漏らすのを聞いたことがある。

「ホームランバッターと言える基準はやっぱり40本をクリアできるかどうかだと思うけど、逆方向にしっかり狙って打てなければここ(メジャー)で40ホーマーは打てないと思う」

 もちろん松井さんも日本ではプロ入り7年目の1999年に42本塁打を放って、その後は3度の大台超えを達成している。さらにメジャー移籍直前の2002年には日本人打者では王さんや落合さんなど過去に4人しかいない50本の壁も突破している。

 ただ当時の日本の球界には意識的にカットボールやツーシームなど速くて、手元で動くボールを操る投手はあまりいなかった。その中ではポイントを投手寄りに置いて、いわゆる前さばきで捉えることが、投手の投げたボールを強く叩くための1つの条件だった。だから素質のあるバッターは高校時代から「前でさばけ」と指導を受け、プロに入っても差し込まれないためにさまざまな工夫をして育ってきていたのである。

 王さんは圧倒的な右方向への打球に対して“王シフト”が敷かれたが、お構いなしに徹底して引っ張って、その打球速度の速さで対抗した。松井さんもまたそんなバッターの1人で、高校時代から逆方向への意識などほとんど持たずに、強いインパクトで打球を飛ばすことに専念した。当時の日本では確かにそれで十二分に通用した。

 しかし、メジャーは違ったのだ。

【次ページ】 村上は「逆方向にガンガン打っていた」

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