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村上宗隆22歳が「必然のホームランバッター」であるワケ。松井秀喜にもなかった特別な能力とは? 《世界新の5連発を検証!》 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byKYODO/BUNGEISHUNJU

posted2022/08/04 11:01

村上宗隆22歳が「必然のホームランバッター」であるワケ。松井秀喜にもなかった特別な能力とは? 《世界新の5連発を検証!》<Number Web> photograph by KYODO/BUNGEISHUNJU

史上初の5打席連続本塁打を放ったヤクルト村上宗隆(左)と巨人時代の松井秀喜(右)

 これをしっかり捕まえた打球で左翼席に運んだ。こすったような打球ではなく、右肩を開かずに踏み込み気味に右打者が芯で捉えたような打球で左翼席まで運んだ。逆方向に引っ張るという言葉があるが、まさにその打撃ができる。だからこそ動くボールにも対応できるし、自分のポイントに来た球はしっかり引っ張って途轍もない打球でスタンドまで持っていける。

王、松井タイプでありながら村上が稀有な理由

 そこが王さんでも松井さんでもなく、いまの野球が生み出した必然のホームランバッターだと感じる理由なのである。

 こういうバッティングができるのは、いわゆるホームランバッターでも日本人ではロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平投手やソフトバンクの柳田悠岐外野手など、ほんの一握りしかいない。

 ただ大谷の逆方向の打球は、どちらかといえばヘッドのしなりをうまく使いながらバットにボールを乗せて飛距離を出すタイプ。落合さんに近く、このタイプの方が逆方向への打球は伸びる。そういう意味では村上は王さんや松井さんのタイプでありながら、左に引っ張るのと同じ感覚で逆方向にも捕まえた打球を飛ばせることが稀有なのである。

 今季は昨年に比べてもポイントが少し捕手寄りになっていると指摘する評論家も多い。それだけさらに逆方向への対応力が上がったということで、それが結果として現れたのが、この大記録だった。

「ある程度、そっち方向に打球が飛んでいるのはいいこと。今までは強引に引っ張ったりしていたので。色々な考え方だったり、試しながらやっている」

 これは4月27日の広島戦で6号本塁打をバックスクリーン左に打ち込んだ試合後のコメントだ。

 確実に進化し、確実に結果が伴っている。

 時代が生んだ新しいホームランバッターの誕生である。
 

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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