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村上宗隆22歳が「必然のホームランバッター」であるワケ。松井秀喜にもなかった特別な能力とは? 《世界新の5連発を検証!》
posted2022/08/04 11:01
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
KYODO/BUNGEISHUNJU
いまの野球が生み出した必然のホームランバッター。ヤクルト・村上宗隆内野手が達成した5打席連続本塁打の日本記録達成に改めて感じたことだ。
初めて村上を見たのは、プロ1年目の2018年、シーズン終盤の9月に一軍に昇格してきたときだった。圧倒的なスイングスピードはホームランバッターの必須の条件で、村上にはそれがあった。ただ当然だが、当時はまだまだ攻守に荒々しくて、一軍で活躍するのにはもう少し時間がかかるかもしれないと思った。
しかし翌19年にはレギュラーとして定着して、いきなり36本塁打を放って、ホームラン王争いを演じた。21年は39本塁打で巨人・岡本和真内野手とタイトルを分け合うまでに、急速な進化を遂げてきたのである。
そして今年はさらにステップアップを遂げて、前人未到の領域へと足を踏み入れようとしているようにも見える。
王、松井にも見られない村上の特異性とは?
村上の最大の特長はもちろんグラウンドを90度、目一杯に使ってホームランを打てることにある。
今年の39本塁打の打球方向は右中間を含む右方向が14本で中堅方向が9本、そして左中間を含む左方向が16本とセンターから左方向の打球が全体の64%を占めている。
これは過去の日本人のホームランバッターにはあまりいないタイプで、逆方向への本塁打という点ではロッテ時代に2度の50本塁打以上を記録した落合博満さん(元中日監督)ぐらいである。
ただ落合さんはバットを鞭のようにしならせながらボールを乗せて運ぶ打撃スタイルだったのに対して、村上はどちらかというと圧倒的なスイングスピードを武器にインパクトの強さとフォロースルーで打つタイプ。打撃としてはむしろ元巨人の王貞治さん(現ソフトバンク球団会長兼特別チームアドバイザー)や元巨人でニューヨーク・ヤンキースなどでもプレーした松井秀喜さんに近いタイプの打者と言えるのかもしれない。
ただ、村上にはその2人にも見られない特異性が見てとれる。それが逆方向への打球の質なのだ。