真剣勝負とは違い、ベンチは和やかな空間である。それが球宴。それでいて華やかさもあり、選手たちは社交的に振舞っていた。

　山川はどこで入手をしたのか、事前に用意した馬のマスクを被ってスタメン発表の際にグラウンドに登場した。ベンチでは玩具のピコピコハンマーを手に応援。試合の合間にはベンチ横の中継カメラに向かって、こちらも事前に仕込まれたスケッチブックにメッセージを書いてフリップ芸を披露した。シーズン中ではありえないこと。ただ、山川が、いつもとは違う雰囲気でファンが楽しめるように工夫をしている背中を見てプロのあるべき姿を感じた。

「山川さん、すごいなあと思いました。自分にはまだまだあんなことは出来ないけど、見ている人を楽しませようとしている姿はすごく刺激になりました。スターの人はすごいなと」

　ベンチでも山川は松川の隣に座り、次々と話題を振ってくれたという。

西武・山川穂高に可愛がられるロッテ松川虎生　©Chiba Lotte Marines

思い出深いシーンは清宮のサヨナラ弾

　オールスター第1戦の最大のドラマは、同点で迎えた9回裏2死走者なしの場面。日本ハムファイターズ清宮幸太郎内野手がレフトへサヨナラ本塁打を打って試合を決めると、一緒に喜んだ。松川は目をキラキラと輝かせながら、「オールスターで一番思い出深いシーン」を振り返った。

「放り込んだ瞬間は万歳しました。あんな場面でなかなか打てない。あそこでホームランを打てる清宮さんはすごいと思いました」

日本ハム・伊藤大海、清宮幸太郎と話題の「きつねダンス」のポーズを取るロッテ・松川虎生　©Sankei Shimbun

　ただ華やかな部分だけを目にしたのではない。ひとたび、練習を始めると先輩たちの目の色が変わった。野球の話を聞くと熱く語り出した。ベンチ裏で出番を待つ選手たちのフルスイングは真剣そのものだった。

「こんなに活躍している人たちが、しっかりと備えをして、練習をしている。自分の考え方を持っていて、それに向かって取り組んでいる。だから結果が出ているのだなあと思いました。自分なんてまだまだ。もっともっと野球と向き合い、取り組んでいかないといけないと改めて感じました」

【次ページ】　「朗希さんがいたから、自分も出ることができた」