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「何で僕なんですか?」からスタートした織田裕二54歳の世界陸上…「ハイテンションぶりに違和感」「中継の邪魔」批判をはね返すまで
text by
近藤正高Masataka Kondo
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2022/07/27 11:04
1997年大会から世界陸上のメインキャスターを務めてきた織田裕二(54歳)。25年、13大会連続で中井美穂とコンビを組み、今大会が“最後の世陸”となる
今回の涙に対しては、SNSでの反応もおおむね好意的で、こちらも泣かされたという声もあった。織田の陸上に対する思い入れは、批判の目立った時期を経て、いまや多くの視聴者に受け入れられ、共感を引き出すまでになったといえる。
織田は今年12月で55歳となる。奇しくも1991年の東京大会のときの長嶋茂雄と同じ年齢だ。長嶋はその翌年のシーズンオフに巨人監督に復帰した。織田も世界陸上を卒業したあとは、やはり本業の俳優の仕事に専念するのだろうか。
先に織田が世界陸上で一番印象に残るのはセビリア大会のマイケル・ジョンソンだと語っていたことを紹介した。じつはこの話には続きがある。ジョンソンは次のエドモンド大会(2001年)にはコーチとして参加した。しかし、その出で立ちは大きく変わっていた。現役時代は派手なネックレスや金のスパイクを履いて目立っていたのが、このときは地味なジャージに身を包んでおり、織田はその姿に《主役は選手で自分は裏方に徹するという意識を感じて「カッコいいな」と思》ったという(『Number』2015年9月3日号)。そんなジョンソンにならって、今後の世界陸上では、誰にも気づかれないような格好で、こっそり選手たちを見守る織田裕二の姿があるかもしれない……つい、そんな想像をしてしまう。