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「北海道屈指の進学校出身」「チェコ人コーチと…」世界陸上で日本勢初の銅メダル、北口榛花(24)は一体なにがスゴいのか?
posted2022/08/22 00:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Hiroyuki Nakamura
陸上界にとびっきりの笑顔と行動力を持つ新ヒロインが誕生した。昨夏の東京五輪の陸上女子やり投で日本勢として1964年東京大会以来57年ぶりの決勝進出を果たしてから1年。北口榛花(JAL)がさらに上をいく快挙を成し遂げた。7月に米国オレゴン州で開催された世界陸上選手権で、女子のフィールド種目としては五輪と世界選手権を通じて日本勢初の表彰台となる銅メダルに輝いた。
安定感と勝負強さが光った。1投目から60mを超える62m07を出して3位と好発進を切ると、2投目以降は記録を伸ばせず5位で最終6投目を迎えたが、追い込まれた状況で見事な集中力を発揮した。肩の可動域の広さに定評のあるダイナミックなフォームから放たれたやりは、美しい弧を描いて63m27の地点を突き刺した。この時点で2位。その後1人に抜かれたが、4位とわずか2cm差の銅メダルが確定すると、顔をくしゃくしゃにしながらうれし涙を流した。
陸上を始めたのは高校から
豊かな才能と抜群の実行力で道を切り開いてきた。陸上を始めたのは北海道屈指の進学校である旭川東高校に入学してからだったが、めきめき頭角を現し、高校3年で'15年世界ユース選手権優勝。日大進学後はコーチが不在になって足踏みする時期もあったが、'18年のフィンランド武者修行でチェコ人コーチのデービッド・セケラック氏と出会ったことで運命が変わった。'19年2月に単身でチェコへ渡って指導を受けるようになってからは、課題だった助走の改善に取り組み、記録を飛躍的に伸ばした。
自身2度目の世界選手権だった今回は、当初の目標を「入賞」とやや控えめに設定していたが、それは初出場だった'19年世界選手権が予選落ち、昨年の東京五輪が12位という結果だったから。着実な前進にフォーカスすることにより、チェコで磨き上げてきた技術をもらさず発揮することに成功した。
昨年は東京五輪で左腹斜筋肉離れを起こし、その後3カ月間も練習ができなかったが、再び上昇気流に乗った。'24年パリ五輪に向けては、66m00の自己ベスト更新はもちろん、チェコ選手が'08年に樹立した72m28の世界記録更新も視野に入れている24歳。今後がますます楽しみだ。