オリンピックへの道BACK NUMBER
藤本隆宏52歳が振り返る”日本記録の過去”を消し去ろうとした俳優生活「水泳を避けるように生きていた」「記録が破られて未練が吹っ切れた」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTakuya Sugiyama
posted2022/07/26 17:02
NHKドラマ『坂の上の雲』広瀬武夫役などで知られる俳優の藤本隆宏。俳優となる前は水泳のオリンピアンでもあった藤本に話を聞くと…
「金メダルならずっと水泳界にいたでしょう」
オリンピアンとなったアスリート時代、そこで敗北感を味わい、でも演劇の世界で幅広く活躍する今日。認め難い敗北から新たな道を、唯一無二のセカンドキャリアを築いた。
「1位は一人しかいません。敗れたから第二の人生を選択できたように思います。金メダルならずっと水泳界にいたでしょう。こういう人生は歩めなかった」
着実に重ねた演劇でのキャリアだが、姿勢はかわらない。
「見てくれているだろうと思う方々を想像しながら舞台に立って、演技をお見せした後にいただくカーテンコール。それが好きなので続けている気がします」
オリンピックを経験したアスリートならではのこんな夢も思い描く。
「ミュージカルかお芝居を創りたいですね。オフブロードウェイに行けるような。日本人だけじゃなくて韓国だったり中国だったりアメリカだったり、いろいろな国の人が参加できる作品を。オリンピックも国と国の闘いじゃなく平和のため。演劇でもできるんじゃないかと思っています」
毎年務めている「オリンピックコンサート」のナビゲーターを今年も務めた。現役選手たちも出演するイベントだが、選手には必要以上に声をかけないという。
「触れてはいけないというような、声をかけることで集中している瞬間をじゃましたくない、1分1秒を奪うのはよくないんじゃないかと思ってしまって。選手の気持ちが分かる、じゃないですけど」
全身全霊をかけて打ち込んできた水泳が今もいきていることが伝わってくるようだった。
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